赤ちゃんの睡眠科学で保育者を救う

Sleeping Smart Japan株式会社 代表取締役

愛波 あやさん

 子育てしたことのある人なら、おそらく誰もが経験したことのある赤ちゃんの夜泣き。先輩ママの経験談や母親からの経験談ももちろん参考になるが、「いつかはきちんと寝てくれるようになるから今は耐え時」「赤ちゃんは夜泣きするもの、母親は大変なのよ」という回答が多い。特に米国で出産して、家の中で赤ちゃんと2人きりになる時間が多くなるほど、母親にとっては幸せな喜びの反面ストレスも大きい。

 愛波さんは、国際資格認定機関IPHIの日本代表を務め、これまでに360人以上の乳幼児睡眠コンサルタントを育成している。自身が、出産後、夜泣きや子育てに悩んだことから米国で乳幼児の睡眠科学の勉強を始め、現在は日本を代表する乳幼児睡眠コンサルタントとして、日本の子育て環境をよりよいものにアップデートしようと、講演や執筆、出版を含め幅広く活動中だ。

 愛波さんは、自然環境の豊富なニューヨーク郊外の、自分が子供時代を過ごしたスカースデールで子育てを実践している。活動のきっかけは、米国人のママ友に渡された一冊の本だった。リチャード・ファーバー著『Solve Your Child Sleep Problem』。それは科学的根拠に基づいた、小児科医が書いた赤ちゃんの寝かせ方の本だった。「赤ちゃんを寝かしつける科学ってあるのか」と思った愛波さんは、図書館に通い詰めて15冊ほど睡眠本や医学論文も読み漁った。アメリカの書店には子供を寝かせることを科学する本がびっしり並んでいたことも驚きだった。

 自分の体力も気力も限界に達していた長男が生後10か月の時「セルフねんねトレーニング」を行ったら4日後には一人で夜通し寝るようになったのだ。夜は一人で寝てくれるようになったので自分の時間もとれるようになって、ネットを見てたら「睡眠科学を学べる乳幼児睡眠コンサルタントの資格」に出会った。「私が苦しみから脱した方法を同じように苦しんでいる人に教えてあげたい」という気持ちの一心で睡眠を科学から勉強することにした。

 「エビデンスに基づいた解決方法が具体的にわかると、安心して子育てでき、自信を持つことができる。親が自信を持つことができると、母親の自己肯定感が高まり、子供にもそれが伝わり、子供も自己肯定感が高い人間に育ってくれると思っています」という。

 コロナ禍での2年半の活動状況は、オンライン化したので講演会なども全てオンラインになり、受講生が大幅に増えるという副次的効果があった。

 『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)に続き、コロナ禍で『マンガで読むぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方』(主婦の友社)を出版、睡眠ジャンルのアマゾンランキングで第1位(2021年2月5日調べ)にも輝いた。このほか、おくるみスリーパー・スリーパー・ラビーなど乳幼児の睡眠に役立つ商品開発なども手がけている。これからも、乳幼児の睡眠に関する知識をもっと広め、日米の子供の睡眠に悩む保育者たちに「自分をケアする時間も大切にして欲しい」と訴えて行くつもりだ。(三浦良一記者、写真も)