小さな平和の音楽大使引き連れて

垂水ヴァイオリン財団理事長
垂水優香子さん

 毎年9月の国連総会初日、国連本部前の日本庭園で、平和の鐘を事務総長が突いて鳴らす式典がある。そこで演奏している少年少女ヴァイオリニストたちがいる。世界19か国の国籍の背景を持つ60人。1996年に設立された垂水ヴァイオリン財団の「平和の音楽大使」たちだ。楽団を率いているのが同財団理事長の垂水優香子さんだ。
 歴代のブトロス・ブトロス・ガリ、コフィ・アナン、潘基文、現グテーレスに至る四代の国連事務総長在任期間中に演奏している。国連以外では、財団が設立された96年に、ワシントンDCのジョン・F・ケネディ・センター、バチカンでヨハネ・パウロ二世に演奏を献上、12月にはホワイトハウスで当時のクリントン大統領、ヒラリー夫人の前でのコンサートで演奏もしている。以来国内外公演数は、数え切れないほど。
 垂水さんは九州福岡市で生れた。祖父の代から医者の家系で、生まれた時に父親はまだ九州大学医学部の学生だった。その父親が開 業した四国香川県丸亀市で幼少期を過し、音楽はピアノから始めて8歳でヴァイオリンに転じた。鷲見三郎氏と辰巳明子氏(現桐朋学園主任)に師事。小学校時代は今治から東京に月に一度出かけていってレッスンを受ける日々が続き、中学からは桐朋学園受験のために居を東京に移した。
「桐朋の受験のことを考えると今でも震えるんです」と当時を振り返る。ヴァイオリンを始めたのが8歳と遅かったため、練習のストレスで、教室の一番前の席に座っても黒板の字が読めなくなったほどだったが「この子は伸びる」と言った先生の一言を信じた。桐朋学園に合格、卒業と同時にヴァオリン界の世界的権威、インディアナ大学のジョセフ・ギンゴールド教授の下で8年間修業を積む。コンクールで優勝を競った音楽家たちの姿が印象に残った。負けた音楽家が優勝者に「おめでとう」と祝福の声をかけると、「ありがとう。今夜祝賀パーティがあるから来ないか?」「分かった。じゃあ、あとでワイン持っていくよ!」と明るく交わす会話に「世界に通用する音楽家はこれくらいのスケールがないとだめだ」と痛感した。82年にニューヨークに移った。以来、アメリカで演奏活動と若手ヴァイオリニスト育成の音楽教育に身を捧げてきた。その活動が日本政府からも評価され、昨年外務大臣表彰を受けている。聴衆に感動を与えることが音楽家としての最大のテーマ。それには、大きな心とそれに伴った行動が大切だと子供達に伝えている。(三浦良一記者、写真も)