日本の民主主義の消滅

 英国エコノミスト誌の「2024年世界展望」から初めて日本が消えました。昨年は、一人当たりGDP世界30位、世界競争力ランキング35位など「日本の失われた30年」を表す数字も話題になりました。その日本に激震が起きました。安倍派の約百人の国会議員に5年間で約5億円の裏金が渡ったとされ、官房長官など安倍派の4人の大臣と自民党幹部3人が更迭され、その数人が東京地検の聴取を受けました。

 1989年のリクルート事件では中曽根康弘、宮澤喜一議員など約百人の利益授受が発覚し、竹下登内閣退陣に至りました。これを機に、1994年に政治浄化を目指して金のかかる中選挙区制を小選挙区制に変え、企業献金を廃止して税金による政党助成金制度を導入しました。しかし、今回パーティによる企業献金と裏金方式の実態が噴出しました。

 また、安倍晋三元首相の殺害は、旧統一教会への高額献金による多くの被害者の存在や、「日本はサタンの国」などと主張する韓国の反日的団体の支援を多数の保守政治家が受けていた実態を明らかにしました。

 政治浄化が骨抜きにされ、こうした金と特定団体の支援による選挙地盤が継承され、この30年間で首相の4人に3人、自民党議員の4割弱を世襲議員が占めています。

 民主主義の消滅が根本問題です。三権分立でありながら、近年、首相が省庁、検察、裁判所、日本銀行などの人事権を実質的に行使してきました。しかも、首相は国民に選出された国会議員を、自分に有利な時期に解雇(解散)することもできるのです。

 英国における議員と官僚の接触禁止や、欧米における政府首脳とメディア幹部との会食禁止のルールが存在しないことも、官僚やメディアの中立性を弱めました。日本の報道の自由度ランキングが世界68位という実態や、森友問題で、官僚の政治家に対する忖度(そんたく)から公文書が改ざんされたと言われています。

 国会議員が金や特定の利益ではなく、公正に国民の意思で選出され、その民意に基づき国益を担うまともな民主主義と公正なメディアが必要です。今こそ、外国から与えられた民主主義から自ら関わる民主主義を確立することが、失われた30年から脱却する道です。

ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。