NY感覚のイスラエル料理

 最近ニューヨークでは中東料理が話題だ。その一つが2017年5月に開いた現代イスラエル料理店「ミス・アーダ」。オーナーシェフのトマー・ブレッチマン氏はテルアビブ出身。全米屈指の調理師校「カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ」を卒業後、名高い現代米国料理店「グラマシー・タバーン」などで修業し、同店を開いた。
 「イスラエル料理の魅力は、東欧や中東、北アフリカをはじめとする各国移民が持ち寄った、さまざまな風味を融合させた独自性です」と氏。
メニューは小皿、串、自家製フムス、前菜、主菜と多彩な内容(各8〜28ドル)。伝統に創意を加えた個性的な各品を揃えている。一例は自家製フムス「マサバハ」。米国で一般的なひよこ豆と練り白ゴマで作るクリーミーなフムスと違い、豆を丸のまま柔らかく煮たのがマサバハ。そこに氏はホクホクに茹でた旬のえんどう豆を盛り、さらに通常のフムスも皿に敷き、豆の異なる食感をその旨味とともに楽しませる。また子羊のひき肉を焼いた伝統料理「コフタ・ケバブ」は、シナモンを串に使い、肉の風味に深みを加えつつ、イスラエル料理に欠かせないヨーグルト「ラブネ」と辛いハリサ(唐辛子ブレンド)ソースを添えて味に多面性を与える。
 野菜をふんだんに取り入れたヘルシーさも人気の理由だ。氏いわく「ナスは和種、米国種、オランダ種を使い分けています。和種は火入れで口どけする個性があり、ソースの役割も果たすなど、野菜の魅力は尽きません」。氏はハーブを育てる菜園も敷地内に設けている。
ブルックリンのフォートグリーンにある同店の内装は、居心地良さを意識しながらブレッチマン氏が自らデザインしたもの。連日近隣住人と美食家が同店を埋める。
 「建国70年でイスラエルが作り上げてきた食文化を、自分なりに進化させながら米国に伝えていきたい」とブレッチマン氏は話す。
(片山晶子/ニューヨーク在住ジャーナリスト)