コロナ時代の在外選挙

インターネット投票実現には高い壁

海外有権者ネットワークNY共同代表の2氏に聞く

 7月5日投開票の東京都知事選では、感染リスクを下げるため、自宅のパソコンなどから投票できるインターネット投票の実現を求める声が出ていた。海外ではエストニアがネット投票を実施している。コロナ禍でテレワークも広まるなか、日本でネット投票が実施されていないのはなぜか。

 公職選挙法は44条で「選挙人は選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない」と定める。期日前投票や身体障害者らの郵便投票などの例外は認めるものの、投票所に出向いて投票日に投票するのが原則だと明記しているためだ。在外選挙も船員などのための不在者投票のシステムを応用して、前倒しで投票するシステムと郵便投票を併用しているのが現状だ。

 投票所での投票を求めるのは確実に本人確認ができ、誰に投票したかの秘密を守りやすいからだ。ネット投票を導入するにはなりすましを防ぎ、投票の秘密も確保できる策が不可欠となる。

 活用が想定されるマイナンバーカードの普及率は2割に満たない。サイバー攻撃を防ぐ安全対策も求められる。不備があれば選挙の信頼性が失われる。公選法を改正してネット投票を実現するハードルは高い。

 日本国内の地方選挙で2002年から、投票所でタッチパネル式画面を使って投票する「電子投票」を導入し、投開票の効率化を期待したが、機器のトラブルで選挙が無効となる事例も発生。現在、実施する自治体はない。

 総務省はまず海外に住む日本人向けの在外投票へのネット投票導入を検討している。今年1月に実証実験を始め、ネットと投票所での二重投票の防止策などの課題を洗い出した。自民党青年局は6月、ネット投票導入検討を求める提言をまとめている。公明党の斉藤鉄夫幹事長は7月6日、感染防止策を念頭に「投票する場面で不安を抱かれないような工夫をしなければならない」と話した。コロナと共存する日常の中での選挙、社会的距離を保つ必要性、海外からの郵便の遅れなどによる投票の無効などを避ける工夫が求められる。

 海外有権者ネットワークのニューヨーク共同代表の竹田勝男さんは「現在、コロナウイルス拡散によるパンデミックの最中、インターネット投票に対する要望が高まっています。それをするために乗り越えなければならないことが2つあるように思えます。(1)サイバーセキュリテイーの問題、(2)公職選挙法に言われている『選挙人は自らの意志で投票所に行き、自らの手で投票する』という法律。それゆえ、インターネット投票を実現するためには、上記2点を検討及び解決する必要があります。実行段階では、まず海外居住の有権者がその対象になることは道理にかなっていると思われます」と話している。

 在外選挙権獲得運動にニューヨークで早期から関わってきた同共同代表の竹永浩之さんは「在外選挙でのネット投票の準備は整いつつあると言っていいと思います。日本政府は2015年ぐらいからその実現について検討してきました。ポイントは2022年の参議院選挙に間に合うかどうか。コロナなどの状況もその実現を後押しするかもしれません。今後も注視したいです」と述べている。