安倍首相辞任

「日米同盟を強固に」

多くの米国メディアが指摘

 安倍首相が8月28日に辞意を表明したことを米国メディアも相次いで報じた。

 28日付ニューヨーク・タイムズは「最長記録の首相、安倍晋三氏が病気を理由に辞任」との見出しで、「日本の指導者として最長を記録したわずか8日後に、もっとも大きな野望を達成する前に辞任を決断した」と報じた。東日本大震災からの復興を監督し、経済を回復させ、トランプ大統領と良好な関係を持つなど「大きな功績」を上げたと評価する一方、悲願だった憲法改正と北方領土問題の解決ができなかったと指摘。また3つ目の悲願である北朝鮮による拉致被害者救済もできず、安倍首相が記者会見で強い遺憾の意を表明したことに触れている。

 CNNは28日、森友問題などのスキャンダルにも関わらず選挙では大勝し、安定した政権を維持したことをまず指摘。しかしアベノミクスは経済の下落を回避したに過ぎず、少子高齢化問題に有効な手立てが打てずに、2019年に過去最低の出生率を記録したこと。また移民規制緩和をせず、女性参画政策も中途半端であったとしている。外交面ではちぐはぐさが目立ち、米中対立の中、トランプ大統領と友好な関係を築く一方、中国とは習近平首席と比較的良好な関係を持ったことを指摘している。諸外国とは良好な関係を作り上げたものの韓国とは揉めたままであることを指摘した。

 トランプ大統領との良好な関係を築き日米同盟を強固にしたことは、ワシントン・ポスト紙が社説で強調するなど多くのメディアが指摘。またアベノミクスを評価する見方も多い。29日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「安倍晋三氏のレガシー」とする社説を掲載し、辞任は「日本にとって損失」とした。ブルームバーグは辞任報道で、日経平均株価が一時2・7%安の2万2594円に下落しており、市場は安倍首相に好意的だったことを示唆。「アベノミクスで日本再生を図った」と評価した。ただし拉致問題や北方領土問題などは進展がなかったと指摘した。

 なお、30日付ニューヨーク・タイムズのオピニオン欄に、中野晃一上智大学教授(政治学)の「安倍晋三氏が辞任、スキャンダルの痕跡を残したまま」題する投稿が掲載された。森友・加計学園や桜を見る会などの真相解明が残っており、辞任してもこれらの説明責任が求められるとしている。