高市首相が初来米 米国大手メデイアに温度差

 日本の高市早苗首相による初の訪米をめぐり、米主要メディアはどこも日米同盟強化の重要性を認めつつも、その意味づけや評価には違いがみられる。

 リベラル系のニューヨーク・タイムズは、訪米そのものを単独の大ニュースとして扱うよりも、米外交全体の中で日本を位置づける傾向が強い。報道の焦点は首脳会談の成否ではなく、対中戦略や中東情勢など「世界秩序の中で日本が果たす役割」になっている。特に、日本が米国の対イラン政策や安全保障戦略にどこまで踏み込むかが重要論点となっており、同盟の「負担分担」と「軍事的役割拡大」が分析の軸となっている。

 一方、リベラル・中道系のワシントン・ポストは高市政権を評価する論調が目立つ。同紙は高市首相の選挙勝利について「米国にとって良いニュース」とし、防衛費増額や軍事能力強化を歓迎する姿勢を示していた。さらに訪米についても、対中抑止を軸とした同盟強化の具体化と位置づけ、「中国の脅威に対抗する実務的パートナー」として日本を評価する視点が強い。

 保守系のウォールストリート・ジャーナルは安全保障・経済の実務面に重点を置く。報道では日米関係を「黄金時代」と表現し、防衛費増額や投資、資源協力など具体的成果に焦点を当てる傾向がある。また、高市首相の強硬な対中姿勢が国内支持を得た点にも注目し、日本の政策転換を「現実的な安全保障対応」として肯定的に描く傾向がある。

 高市首相の訪米については、リベラル系は慎重で抑制的、保守系は歓迎・評価と温度差がある。通信社のロイターとAPはその中間で能力や政策を客観的に評価する報道となっている。

 これはテレビ・メディアでも見られ、CNNはニューヨーク・タイムズに近く、「高市首相訪米は重要だがリスクもある」と慎重姿勢の一方、FOXは「強い同盟国・頼れるパートナー」と明確に高市首相を評価している。高市政権が進める防衛費増額、対中強硬、同盟強化というのは一部のリベラル系が慎重姿勢を示しているが、総じて評価されていると言えよう。なお、ABC、CBS、NBCの3大ネットワークでは高市首相訪米の報道はほとんど取り上げられていない。米国内の一般視聴者にとってはそれほど関心があるものではないと思われる。

 米国とイスラエルによるイラン戦争が3週間目に突入し、世界の関心事は石油タンカーの要衝となっているホルムズ海峡の封鎖による世界経済への深刻な影響だ。17日付ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領の呼びかけによる集団護衛艦船の派遣に対して、ドイツが「この戦争には関わらない」として艦船派遣を拒否、フランスも警護の必要性は認めるがあくまで戦闘が終結してからという条件つきだ。

 トランプ大統領は「既に勝っている戦争の先勝国の尻馬に乗ってもらわなくていい。支援はいらない」と欧州、NATOの及び腰に不満を表明している。

 ホルムズ海峡の現状では日本の国内法で海上自衛隊の護衛艦船派遣は難しい。その中でどう高市首相はトランプ大統領と折り合いをつけるのか。一方で日本と歴史的に友好関係にあるイランからはアメリカの要請には従わなくても日本のタンカーを安全に通過させる方法はあると揺さぶりをかけている。日本国内の中にも「同盟国になんの事前連絡もなく勝手に戦争を始めておいて、問題が出たら助けて欲しいというのは何なのか」(杉山元駐米大使)というコメントもSNS上で米国に聞こえてくる。

 19日の高市・トランプ日米首脳会談は、世界が注視するなかでの開催。「日米同盟」の真価が問われるだけでなく、日本の外交力そのものを世界に示す歴史的なターニングポイントともなり、会談後の米論調が今後どう展開するのかが注目される。(関連記事5面、視座点描など)