愛と憎しみのはざまで Honey Boy

PHOTO : Amazon Studios

「イーグル・アイ」や「トランスフォーマー」シリーズのサムで知られる人気俳優シャイア・ラブーフの少年時代を伝記風に描いた物語。10歳頃からCM、ドラマなど俳優キャリアをスタートさせたラブーフが経済的、精神的に辛かった子ども時代を赤裸々に綴るストーリーだ。興味深いのはラブーフ自身がこの脚本をリハビリテーション施設で治療中に書いたことだ。 
 ラブーフは2014年ごろから公の場所での酩酊や警官への公務執行妨害などで数回逮捕され、2017年には裁判所からアルコール・薬物乱用のリハビリ、アンガーマネジメント(怒りをコントロールするスキル)カウンセリングなどを命じられた。そこで子どもの頃の体験による心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、治療の一環として過去の自分と向き合うために父親と過ごした少年時代を思い起こして書き始めたというわけだ。タイトルの「ハニー・ボーイ」はラブーフが子どもの時のネックネーム。監督は「ボンベイ・ビーチ」(2011年)、「LoveTrue」(16年)などのドキュメンタリーで高い評価を得ているイスラエル系アメリカ人監督・映像作家アルマ・ハレル。  
 作品中の主人公の名はオーティス。「クワイエット・プレイス」(18年)のイギリス人子役ノア・ジュープが子ども時代のオーティスに扮する。愛くるしさと悲しさをミックスさせた天真爛漫なオーティスを完璧に演じ切る。青年時代は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたルーカス・ヘッジス。ラブーフ自身も父親役を演じるなど全力投球の作品だ。1995年、ロサンゼルス。12歳のオーティスは父親ジェームスと一緒に安アパートで暮らしている。生活費はオーティスがCM出演などで稼いでいる。帰還兵でアルコール依存症でもある父との生活は貧しいだけでなく常に不安が付きまとう。しかし父親が嫌いなわけではない。オーティスは嫌なことや悲しいことは無意識のうちに心の奥深くに閉じ込めてしまう。そうすることで気持ちが楽になるからだ。しかし、その弊害は青年となったオーティスを襲う。1時間33分。R。 (明)


■上映館■
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway
Cinepolis Chelsea
260 W. 23rd St.
Angelika Film Center
18 W.Houston St.