宮城聰のアンティゴネ ニューヨーカーを魅了

Photo: Stephanie Berge

 日本演劇界を代表する演出家の宮城聰(みやぎさとし)の舞台「アンティゴネ」が9月25日、マンハッタンのパーク・アベニュー・アーモリーで始まった。国王の命令に従って死骸を野ざらしにすべきか丁寧に埋葬するのが正しいのか。有名なギリシャ悲劇に日本人の死生観を重ねた本作品は、連日約1000席の会場を埋め尽くしたニューヨーカーの大絶賛を浴びている。
 驚かされるのは1万8000ガロンというプールのような水の舞台。上演前から役者が静かに水の中を歩いたり物語のあらすじを英語でコケティッシュに説明したりする前座、英語字幕を見せつつ台詞と動作を別の役者が演じる手法、能や文楽、盆踊り、僧侶など、日本的要素が織り込まれる舞台で観客を魅了する。。
 28日夜の公演では、「打楽器とスローな動作のコントラストが素晴らしかった」「ただただ美しい」などの声が聞かれた。終演後に出口で観客を見送る宮城に、感想を伝えたいニューヨーカーの列ができていた。宮城は本紙インタビューに対し、「これだけの規模としつらえでやれたことに感動しています。ニューヨークのお客様はさまざまなバックグラウンドを持っていらっしゃるので、ここで自分の作品が評価されれば自分の作品に普遍性が内在しているということが証明されたということになると思います。今回は自分にとって大きな経験になりました」と話していた。
 本公演は全11回、6日(日)まで。静岡県舞台芸術センター(SPAC)と国際交流基金との共催。 (小味かおる)