第一線で命を救うやりがい

アルバートアインシュタイン医科大学助教授 
モンテフィオーレ病院集中治療専門医 

コルビン麻衣さん

 Intencivistという専門医がいる。さまざまな集中治療室(ICU)で、重要臓器の機能不全などから生命が危険にさらされている患者を専門的に診る医師のことで、例えば心臓胸部ICUでは体外式膜型人工肺を必要とする患者や、心臓移植や心臓バイパス、肺移植などの手術を受けた患者の術後ケアを任される。また、入院中に突然容態が悪化した患者やERからICUへの入院が必要だと判断された患者を集中治療のコンサルタントとして診ることもある。ブロンクスの大病院で集中治療専門医として活躍しているコルビン麻衣さんに話を伺った。
 もともとユニセフや国連の仕事に興味があったのと、英語を真剣に学ぶために高2の夏に留学。渡米直後は英語力のなさを痛感したものの、恵まれた環境でスポーツ、芸術、勉強と充実した高校生活を送るなかで米国の大学に進学したいと思うようになり、名門カーネギーメロン大学に進学、4年半で修士号と学士号を取得した。「何かしら人のためになる仕事をしたいと思っていたのですが、大学在学中に病院でボランティアや、研修医についてまわるshadowing program をするなかで医師になりたいという決意が固まり、フロリダ州のメディカルスクールに進学しました」。 
 医師免許取得後はモンテフィオーレ病院の内科で研修医を務めた後、呼吸器と集中治療の専門研修を経て現職に就いた。同病院は地元ブロンクスに根付いた病院で毎日さまざまな患者が多数訪れる。なかでもERを訪れる患者数は全米でも10本の指に入るほど多忙だ。さまざまな分野があるなかで集中治療科を選んだ理由を尋ねると「研修医としてICUで働いた際に生命の危機に瀕している患者さんとその家族に寄り添い、どんな状況にあっても落ちついて的確に判断を下す指導医の姿を見て憧れを抱いたのがきっかけです。一つの臓器に特化するのではなく急性臓器不全の患者さんを総合的にケアできる事、仕事にメリハリがある事、そして何より第一線で誰かの命を救う手伝いができる事にやりがいを感じたことです。忙しくしていることが好きな性格ともあっていたんだと思います」。
 専門医研修中に2人の子供を出産、3歳の男の子と1歳の女の子の母親として、主婦として、集中治療専門医として多忙な毎日を送るコルビン先生。今後の目標は? との質問に「仕事と家庭のバランスを保ちながら仕事を続け、常に自ら学ぶ姿勢を忘れず、今後は医学生や研修医の指導にもっと力を入れていきたいと思います。また日本人として、自分らしい形で日本人コミュニティーにも貢献できたら幸せです。将来的に子供が独立したら、私が医師を目指すきっかけになったグローバル・ヘルス(地球規模の健康課題、公衆衛生)にも貢献できたら、と思っています」と笑顔で答えた。   (東海砂智子)