NY映画祭17日から

オンラインとドライブイン上映で

 毎年秋にリンカーン・センターが開催するニューヨーク映画祭は今年58回目を迎える。世界から厳選された25作品が上映されるメイン部門は、ロンドンの西インド諸島移民のコミュニティを舞台に1980年の一夜の男女を描くスティーブ・マックイーン監督の『Lovers Rock』で開幕。中間ハイライトは中国出身のクロエ・ジャオ監督の『Nomadland』で、アメリカ西部を巡る季節労働者となった未亡人を、製作も兼ねるフランシス・マクドーマットが演ずる。クロージングのアザゼル・ジェイコブ監督の『French Exit』は、息子と猫とともにパリに逃避行する落ちぶれたニューヨークの上流階級の未亡人(ミシェル・ファイファー)を描く。

 マックイーン監督は自らの地元を描く3部作として『Lovers Rock』を作っているが、1960年代からの実話に基づき白人警官の暴力や人種差別について描く他の2作『Mangrove』『Red, White and Blue』も上映される。

 90歳のベテラン監督フレデリック・ワイズマンがボストンの市庁舎の動向を凝視する272分のドキュメンタリー『City Hall』、中央アジアのジョージアの34歳の新人女性監督デア・クルムベガシュヴィリが周囲に迫害される宗教団体の女性を描く『Beginning』の他、アイヴォリー・コースト、アルゼンチン、メキシコ、中国、台湾、韓国、ルーマニア、ノルウエー等世界各国からの映像が届く。

 回顧部門では修復されたジャン・ヴィゴ監督の『操行ゼロ』(33)、ウィリアム・クライン監督の『Muhammad Ali, the Greatest』(74)、ウオン・カーウアイ監督の『花様年華』(00)などが上映される。新しい動きの部門では、池添俊監督が祖母の人生を綴る『朝の夢(See You in My Dreams)』や、京都北部の村の農婦の生活を追う8時間の話題作『The Works and Days (of Tayoko Shiojiri in the Shiotani Basin)』(C.W. ウインターとアンデルス・エドストローム共同監督)が紹介される。

 短編特集では、幼年時代の思い出か夢か不確定なイメージが展開する川添彩監督の『とてつもなく大きな(Humongous!)』、日本から来た従弟を案内しているうちにニューヨークの過酷な現実に影響されていく登場人物の心理を描く空音央監督の『The Chicken』などが上映される。

      (平野共余子)

 今回の上映はオンライン上映(virtual screenings)、ブルックリンとクイーンズでの野外ドライブイン上映のみ。チケットは全て事前にオンラインで購入する。詳細はウェブサイトwww.filmlinc.org を参照する。


ドライブイン上映

Brooklyn Drive-In at The Brooklyn Army Terminal

 80 58th Street Brooklyn, NY 11220

https://rooftopfilms.com/drivein/brooklyn/faqs/

Queens Drive-In at The New York Hall of Science

  47-01 111th Street Corona, NY 11368

https://rooftopfilms.com/drivein/queens/faqs/


(写真)『The Chicken』 ©Neo Sora