着物に見るジャポニズム

メトロポリタン美術館

モニカ・ビンチク学芸員

 メトロポリタン美術館 は現在「着物スタイル ジョン・C・ウェバー・コレクション展」 を開催している。同展では18世紀後期から20世紀初頭に近代の女性のライフスタイルに適応し用いられたT字型の衣服である着物の流行の変遷をたどる。同展を企画したダイアン&アーサー・アビー日本工芸アソシエイト・キューレーターのモニカ・ビンチクさんは、「着物は何世紀にもわたって、女性の歴史と生活を描写し記録するためのタブローとして役立ってきました。これらの手の込んだ衣服の所有者の状況とその製造技術に光を当てると、さまざまな模様と色、そしてそれらの様子が頻繁に変化する傾向から、日本の文化と社会について多くのことが明らかになります。多数の西洋クチュリエやデザイナーにとって、着物は新しいモチーフや斬新なカットを想起させる触媒となり、体と服の間に空間を作ることで着用者に自由を与えるきっかけとなりました。着物の世界のジャポニズムと言ってもいいでしょう。同時に、西洋の製造技術と素材は芸術的なトレンドとともに、着物の近代化に貢献し、新鮮なスタイルを作り出すことに役立ちました。相互の交流があったわけですね」 と話す。

 明治時代に洋服が日本に紹介された。同時に、近代化と社会の変化または制作技術発展により、それまで以上に多くの日本女性が絹の着物を手に入れることができるようになった。その後、着物のモチーフのいくつかは、西洋美術の影響を受けた。1920年代頃、手頃な価格の銘仙の需要が高まり、より西洋化されたライフスタイルが反映された。これらは、西洋式マーケティングと経営戦略に従って、西洋化された三越などの百貨店で販売された。

(写真)左:仏メゾン・バレンシアガのイブニングラップ(1957年) 右:モンドリアンのデザインで染められた着物