芥川の世界観

八王子車人形NY公演

ジャパン・ソサエティー

 ジャパン・ソサエティー(JS)は2月23日から25日までの3日間、芥川龍之介の5つの代表作をベースに創られた人形劇「AKUTAGAWA」を上演した。同作品は、日本の短編小説の父と言われるほど傑出した短編を多く残した文豪・芥川による5つの短編『羅生門』『地獄変』『竜』『杜子春』『河童』を紡いだもの。各ストーリーを通して、芥川の作家としての洞察力や不安定な精神世界を描き出す。出演は、八王子車人形・五代目家元西川古柳とアメリカ人パペット・アーティスト、トム・リー。また、ニューヨークで長年活躍するミュージシャン辻幸生のライブサウンドが加わり、躍動感に溢れたステージを披露した。

Photo Richard Termine

© 2023 Richard Termine. PHOTO CREDIT – Richard Termine

芥川の人生観は歯車のようなもので
生きているときは回り、止まると破滅

八王子車人形・五代目家元

西川古柳さん

 ジャパン・ソサエティーで芥川龍之介の5つの代表作をベースに創られた人形劇「AKUTAGAWA」を上演した。同作品は、日本の短編小説の父と言われるほど傑出した短編を多く残した文豪・芥川による5つの短編『羅生門』『地獄変』『竜』『杜子春』『河童』を紡いだものだ。

 八王子車人形・五代目家元西川古柳さんは、八王子に160年以上続く、国選択無形民俗文化財である伝統人形芝居「八王子車人形」の五代目家元。1953年八王子に生まれ、幼少より祖父(三代目)、父(四代目)に指導を受け、23歳で文楽研修生として三人遣いの操作も学んだ。地元八王子での定期公演のほか、日本各地で公演を行い、各地の伝統人形劇団で指導にあたる。95年からは、「受け継がれていく伝統人形芝居」を主催し、日本の伝統人形を守り、広めるための活動を続けている。

 車人形は「ろくろ車」という、前に二個、後ろに一個の車輪がついた箱形の車に腰掛けて、一人の人形遣いが一体の人形を繰る、特殊な一人遣いの人形芝居。江戸時代末期、現在の埼玉県飯能市に生まれた山岸柳吉(初代・西川古柳)が考案し、その後、近郊の神楽師(神事芸能を専業とする人)を中心に分布し、農山村や八王子織物の生産に関わる人の娯楽として親しまれてきた。

 芥川の人形は、自家製で、自分で作った。コピー的なものではなく、ニュアンスが伝わる、ちょっとだけイメージが湧くような作りにしたという。あまりに写真に似過ぎると観客の魂がそちらに引き寄せられ過ぎるからだ。

 5つの短編とはいっても、芥川の作品は文字数が多い。それをどこまで削ることができるか、表現とのせめぎあいではあるが、芥川の「人生は歯車のようなもので、生きている時は歯車が回るが、止まってしまうと人生の破滅」だと。5つの作品をオムニバス形式で繋いだ。「人間がこれから生きていく上で何が重要なのか」を大切に表現しているという。

 こうも言った。「これからも芥川の作品を続けていきたいが、日本の心を押し付けがましいと取られやしないか心配だったが、レセプションで皆さんが喜んでくれているのが分かりほっとした。ビジュアルでストーリーを伝える。それによって改めて芥川の作品を見直してもらえたら嬉しい。古典作品を通して日本古来の生き方に共感してもらえたらなおさらだ。芥川もその一つだ」。

 人形が命を宿し、魂が入るのは、芸や技術ではなく、人形使いの心が宿っているかどうかだ。舞台の西川さんの表情からそれが見てとれた。(三浦良一記者、写真も)