編集後記
みなさん、こんにちは。ニューヨーク日本人学校(コネチカット州グリニッチ、森本恵作校長)で10月17日、小学5年生の国語の「新聞を読もう」という学習の一環として授業の講師に招かれ、新聞の役割や編集の仕事について話す機会がありました。その目的は、予め紙面の構成や制作についての一般的な内容を教科書で学んだ後、実際に新聞編集に関わっている実社会の人から話を聞いてみるというものでした。
新聞の仕事の一番大事なことは「実際に起こったことを正確に早く伝えること」だけれども、起こった事実を伝える際に、報告する者の見た角度、報告の仕方によっては情報が全く変わってしまうことを小学校5年生にも分かりやすいように伝えました。具体的には次のような例で説明しました。
コーヒーカップをまだ見たことのない子供に「コーヒーカップというものはどんな形をしているか調べてきてください」と言って、調べて戻ってきた生徒のAさんは「見て来ました。正方形ですね」と報告。Bさんは「いや、私が見たのは丸でした」と全く違った報告をしました。Aさんはコーヒーカップを真横から見て、Bさんは真上から見たままを報告したからです。どちらも見た現実は事実でも、実際のコーヒーカップは、コンピュータグラフィックの立体CGで回転するように観察するとみなさんの知っているようなカップとして認識できるわけです。事実が異なって伝わってしまわないようにさまざまなな角度から物事を見る必要性があることを話しました。
そして取材は、見てきたことをそのまま伝えるのではなくて、例えばコーヒーカップに入っていた半分のコーヒーが、いつからあるのか、誰がいれたのか、新しいのか古いのか、それは自分で考えても答えは出ないのでそのコーヒーカップの近くにいた人を探し出して話を聞くことで真実が浮かび上がってくると。
さらに新聞は、これから確実に起こることが分かっていて、それをまだ知らない人に教える、告知する、という仕事もありますが、これから起こるかどうか分からないことは載せません。なので、新聞には科学的に分析された「天気予報」は載っていても、週刊誌や雑誌にあるような「星座占い」や「恋占い」は載せませんと。
また、主見出しや袖見出しのおよその文字数やレイアウトの工夫、新聞が編集・校閲・校正を経て発行されるまでの流れなどについても紹介し、その後、実際の新聞を使って見出しを付けるワークショップも行いました。子ども達は編集員になった気分で限られた時間の中、見出し作りに挑戦しました。見出しの文字数や構成のポイントを意識しながら、それぞれの記事に合った見出しを考えてくれました。授業の最後には「新聞を作ることの難しさだけでなく、楽しさも分かった」「実際にやってみると、見出しを付けることは本文を書くよりも難しいと思った」と感想を話す子どももいました。人がまだ知らないことを伝えることの面白さが少しでも伝わればいいなと思った次第です。今週号の14面で掲載しています。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)
