編集後記
みなさん、こんにちは。私は写真の腕一本でメシを食っているプロのカメラマンではないが、日常的に仕事で写真は撮る。とは言っても主に取材のついでに写真を押さえるという類いのもので、メインは記事で、それを補う形での証拠写真、ポートレートということになる。新聞記者が肩にカメラをぶら下げて、現場の写真を撮影するという一種の報道写真だ。1980年に小さなロサンゼルスの日系経済新聞社での5年間を振り出しに、大手日本の新聞社のNY現地版記者、デスクとして18年間関わり、そのあと21年前にこの週刊NY生活をスタートしているので、かれこれ45年近く、取材のかたわら、毎週途切れることなくシャッターを押し続けているわけだ。これだけ場数を踏めば、下手な鉄砲射ちゃ当たるじゃないけど、なんとなく写真は撮れるようになる。石の上にも3年どころじゃなくて、シャッターを押し続けて45年だから、バカでも撮れるようになる。使ったカメラはそんなに多くはないが、ニコンF3とニコンFMが長く、初期はキヤノンF2なども重たいけどフイルムカメラの時代はそれを使った。デジタルの時代になると、露出とかシャッタースピードとか、ストロボの光の周り具合などカメラの方が全て計算して綺麗に撮ってくれるようになり、まあ誰でも綺麗なそれなりの写真を撮れるような時代になっている。ところが、この現代でも踏み入れない別世界がまだある。ライカだ。昔はこのカメラ一台で一軒の家が買えたという。泣く子も黙るライカカメラ。写真家、橋本よし憲さんは1959年(昭和34年)に福岡県小倉生まれ。78年に九州産業大学芸術学部写真学科に入学。83年、両親に一年だけと約束してニューヨークへ。アメリカンヴォーグなどファッション誌で仕事をしていた日本人写真家、石室英介のアシスタントに採用され白黒プリントのトム・ジェイキンスとこの頃知り合い彼の仕事を手伝う。ロバート・キャパの兄、コーネル・キャパのマグナムとNY写真ファンデーションで有名なアプチャーの仕事を手伝う。フリーランスのフォトアシスタントとしてアルバート・ワトソンやパトリック・デマーシェリエの仕事を共にする。このころ、なけなしの金を叩いてライカを購入する。彼が撮影旅行をした海外の写真を集めた写真集『Leica note』(マグノリア出版)がこのほど出版された。プロのカメラマンがライカで撮影するとどういうことになるのかを思い知る。いつか手にすることはあるか分からないが、未知の世界への誘(いざな)いを感じた。今週号10面に写真と共に書評で紹介している。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)