夏はスカッとシアサッカー

イケメン男子服飾Q&A 91
ケン 青木

   6月になりました。陽が長くなってきましたね。今の時期、御家族で夕食を済ませてからでも外へ遊びにお出掛け出来ます。私も子どもたちが小さかった頃は、夕食後に移動式の遊園地に連れて行ったり、ショッピング・モールをブラブラしたり、子どもたちのお友達の家に遊びに行ったりetc.日の長さをエンジョイしたものでした。

 日本のような梅雨こそないものの、日によっては朝晩の気温差が意外とあったりして、身体の温度調整が難しかったりする時もありますよね。そんな時に男性諸氏にオススメしたいのが、いわゆるサマー・ジャケットなんです。ニューヨークに居りますと、現地の方から”sportcoat”とか”sports jacket”といった言葉を耳にすることがあるやもしれません。実はsport,sportingといった言葉には「自分の好きなことに夢中になる」といった意味があるのだそうです。

 これは特に19世紀前半から中盤期にかけて英国のアッパークラスにおいて顕著であった御話なのですが、彼らは馬に乗ります。釣りや狩りをします、また自然の中でバードウォッチングもします。そんな時に着る、また羽織るジャケットのことをsportcoatと言うようになったのです。スポートコート、スーツの上着とは例えばポケットのあしらい方が異なり、パッチ・ポケットと言いますが、共布を張り付けのポケットとして、必要なモノを入れやすく、そしてカジュアルでスポーティなムードをも演出してくれるのです。

 スポートコートの生地については今の時期、綿や麻など様々な素材、生地がありますが、Seersuckerシアサッカーという、綿素材で縦方向に”縮み”が入った生地、柄は主に数ミリ巾のブルー×白、紺×白、グレー×白などのストライプがお奨めです。”縮み”が入っていることでシワにもなりにくくサッパリ感があり、夏場に適した生地です。上着、ジャケットだけでも良いですが、同じ生地でスラックスもお求めになられてスーツとして着用されてもまた良しです。例えば、ブルー×白のシアサッカーのストライプ地を上下スーツで着用され、中には紺無地のポロシャツ、足元は茶色のローファー、もしくは白や紺のシンプルなデザインのスニーカー、といった感じで組み合わせていただくと夏場のカジュアルでサッパリ感ある大人の男性のスーツスタイルが出来上がります。ボタンについても明るい茶色の牛の角のボタンや、白い蝶貝を加工したボタンがスポーティな雰囲気で良く合いますよ。

 今からおおよそ百数十年前、当時は大英帝国の植民地であったインドから同国自慢の綿生地の業者が、急速に経済が盛り上がってきたアメリカに売り込みに来るようになりました。その中にシアサッカーやマドラス・チェックなどの生地があり、ブルックス・ブラザーズなどの紳士服店が扱うようになったのです。それまで英国ではこの様な生地で作られたテイラードの紳士服はなく、その様な意味においてシアサッカーの服はアメリカン・トラディショナルなのです。生地はインド製でしたが、生地の名の由来はペルシャ語で、「ミルクと砂糖」を意味するのだそう。面白いですね(笑)。言われてみれば確かにそのような気が。それではまた次回。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。