ニューヨークの魔法 27岡田光世 真紅のバラの花束を抱えて、友人のアパートメントのエレベーターに乗る。中には男の人が三人いて、ひとりがリボンの付いた色とりどりの花束を抱えて立っていた。 まあ、偶然ね。なんてきれいな花 […]
カテゴリー: ニューヨークの魔法
忘れがたき故郷
ニューヨークの魔法 ㉖岡田光世 三月二十五日、ギリシャの独立を記念し、パレードが行われる。五番街は国旗の色、青と白で鮮やかだ。アイルランド系移民のセント・パトリック・デー・パレードに圧倒され、それほど目立たない存在だが […]
キスとハグのおすそ分け
ニューヨークの魔法 ㉕岡田光世 その年のバレンタインデーの朝を、さみしい思いで迎えた。アメリカでは、男性が女性に贈り物をする。夫は日本にいる。何も贈ってくる気配はない。仕事以外の予定は、何もない。 もらえ […]
恐竜のお守り
ニューヨークの魔法 ㉔岡田光世 向こうの大きなテーブルは、障害を抱えた子どもたちのグループでにぎやかだった。何かを楽しそうに作っている。 私は、アメリカ南東部、ジョージア州のコロンバスという町にしばらく滞在していた。 […]
ハレルヤ!
ニューヨークの魔法 ㉓岡田光世 サンクスギビングに、サウス・ブロンクスの教会に行った。この辺りは犯罪多発地帯として悪名高い。午前九時半、礼拝堂にはすでに二十人ほどが集まり、静かに祈っている。祭壇の前の床にも数人がひざま […]
スープをすするドラキュラ
ニューヨークの魔法 ㉒岡田光世 頭から足の先まで、体中を包帯でぐるぐる巻きにされた女の子が、両親に手を引かれて歩いてくる。アッパー・ウエストサイドの閑静な住宅地だ。 That’s spooky! 人々は思わず、振り […]
ダディの星条旗
ニューヨークの魔法 ㉑岡田光世 同時多発テロ事件から七年目の九月十一日、式典が終わり、グラウンドゼロの脇にある通路を歩いていた。金網の向こうに、グラウンドゼロが見える。この巨大な空虚な穴を見つめていると、心臓をえぐられ […]
ランチのおかずは、街ゆく人たち
ニューヨークの魔法 ⑳岡田光世 先生はもうすぐ、九十歳になろうとしていた。元気な声で出てくれますように。祈る思いで、数年ぶりに電話する。 岡田さん? ああ、うれしい。どこにいるの? 今日、お会いできる? 先生はいつ […]
子どものリュックを背負った男
ニューヨークの魔法 ⑲岡田光世 通りを歩いていると、信号の手前で体格のいい白人の中年男性が、両腕をバタバタさせて、何やら情けない顔であわてている。身動きできないようだ。よく見ると、キャラクターが描かれた、小さなピンクの […]
あなた、それでも日本人?
ニューヨークの魔法 ⑱岡田光世 My bonsai is dead! 私のボンサイが、死んでしまったじゃないの! 突然、サラに激しい口調で責め立てられ、私は言葉を失った。 ミッツィ(私の […]
意外なほめ言葉
ニューヨークの魔法 ⑰岡田光世 I love your coat. あなたのコート、すてきね。 I love your bag. そのバッグ、いいわね。 見知らぬ人に、服装や身につけている物をほめられることは、 […]
土曜日の朝のカフェ
ニューヨークの魔法 ⑯岡田光世 ドアを開けると、すでに店内は朝食をとる人で活気にあふれていた。土曜日の朝、アッパーウエストサイドでブロードウエイを、「ゼイバーズ・カフェ」(Zabar’s Cafe) に向かって私は歩い […]