帰国前に知っておきたい 日本の相続・税務事情

内藤税理士がJAAで講演

 ニューヨーク日系人会で8日、「変わりゆく日本の相続税・贈与税〜日本へ帰国して困らないために〜」と題した講演会が開かれ、一般社団法人日米帰国支援センター代表理事(税理士法人アーク&パートナーズ代表の内藤克税理士)が、米国在住者が日本へ帰国する際に注意すべき相続・税務の最新制度について解説した。

 内藤氏は、相続対策は単なる節税ではなく、「納税資金の確保」「円満な遺産分割」「適正な節税」の三つを柱として考えることが重要だと説明。高齢化や国際結婚、海外資産の増加などにより相続の形態が多様化し、国際相続やデジタル資産を含めた新たな課題への備えが求められていると指摘した。

 講演では、2024年以降の贈与税改正にも触れ、暦年贈与では相続財産への持ち戻し期間が7年に延長された一方、相続時精算課税制度には年間110万円の基礎控除が新設され、従来より利用しやすくなったことを紹介。制度の特徴を理解し、家族の状況に応じて使い分けることが重要だと述べた。

 また、日本へ帰国するタイミングによって、米国不動産の売却益や為替差益、日本での相続税・所得税の扱いが大きく変わる点についても具体例を挙げて説明。米国市民権やグリーンカードの有無、家族の国籍や居住地、保有資産の所在などによって税務が異なるため、「帰国後では手遅れになるケースもある」とし、帰国前から専門家へ相談する重要性を強調した。

 さらに、米国の401(k)やIRA、トラスト、共同名義口座、TODD(死亡時譲渡制度)など、米国特有の資産管理制度についても、日本の相続制度との違いを理解しておく必要があると説明。日米双方で申告が必要となるケースや外国税額控除の仕組みなども紹介され、参加者は熱心に耳を傾けていた。

 内藤氏は「まずは国籍、居住地、資産の所在を整理することが国際相続対策の第一歩」と述べ、帰国を予定する人だけでなく、将来日本での生活を考える在米邦人にとっても早めの準備が大切だと呼び掛けた。

 内藤氏は、昨年11月に日本で設立された一般社団法人日米帰国支援センター(東京都千代田区有楽町、電話03・6551・2535)に日米税務の専門家として代表理事に名前を連ねている。このほか、遺言・相続には弁護士の長家広明氏、信託・登記には司法書士の西田誠氏、年金相談には社会保険労務士碓井健一氏、帰化申請・国籍取得には行政書士の名坂恵美子氏が理事として参画している。当日は、ズーム聴講者も含め約80人が参加した。