日本のスタートアップ企業が米国の投資家を得る方法

日本クラブ、Reinvent NY 共催による「第3回ニューヨークビジネスパーソンの会 2026夏の陣」が18日、日本クラブで開催された。NYで活躍する日本人ビジネスパーソン同士の交流を目的としたコミュニティイベントで、ゲストスピーカーは、ベンチャーキャピタリスト&テクニカルアドバイザーの伊藤豪氏(慶大理工学部卒でソニーグループ社員を経てクエストベンチャーパートナーズ・ゼネラルパートナー)。講演では「米国VCはスタートアップの何を見て評価しているのか」について幅広い知見から解説した。
【講演内容は次の通り】
AI企業の収益は、他のセクターの約10倍という驚異的なスピードで拡大している。収益100Mドル達成期間はドットコム時代は約10年、SaaS時代は約5年、AI時代は約2年で達成。一方でIPO(新規株式公開)は、2021年のピーク以来激減し、セカンダリー市場の拡大を背景にスタートアップ企業にとってIPOが必ずしもゴールではなくなっている。セカンダリー市場は投資家への流動性提供において急速に成長している。市場は、AI関連セクターに集中する投資と、その他セクターへの限定的な投資と明確に分かれる。
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米国のVCは、スタートアップの何を見て評価しているのか
なぜ米国VCからの資金調達は難易度が高いのか。
結論:伝え方の違いにある。
米国VCからの資金調達が難しいのは、技術やアイデアそのものよりも「伝え方」「物語の組み立て方」にズレがあるからだ。日本のスタートアップの技術力やプロダクトは、米国に対して決して劣ってはいない。むしろ多くの起業家が持つ「志」と「現場の強さ」はそのままで勝負できる素材だ。しかし、投資ゴール(投資哲学)の違いがミスマッチを生む。日本と米国とでは、投資家が「どんな勝ち方(イグジット)を求めているかが違う。日本は「打率」と「リスクマネージメント」。米国は「スケールするスピード」と「リターンサイズ」だ。
米国VCが重視する「初期の評価軸」は、実績のない初期段階において「ホームランの匂い」がするかどうかを次の3点で嗅ぎ取る。(1)創業者の人柄。誠実さ、粘り強さ、学び続ける姿勢(2)数兆円規模の巨大なビジョンと「なぜ今なのか」というタイミング(3)成長のスピード。(1)について米国のVCが最も知りたいのは「創業者の不公平な優位性」だ。つまり米国の投資家は、初期段階の企業のアイデアは「必ず方向転換(ピボット)する」ことが分かっているので、「アイデアやプラン」ではなく「起業家自身」に投資する。その起業家がこの市場で、世界の誰よりも勝てる理由、その人だけが苦労して得た「業界のまだ誰も気づいていない真実は何か?」「他人が真似のできないあなたの武器は何か?」「あなたを突き動かしているものは何か?」
このような質問を通して創業者がUnfair Advantage(不公平な優位性)を持っているのかどうかを見極める。また創業者の失敗から立ち上がる回復力、タフさも米国のVCが重視する要素の一つだ。
創業者は1人より複数がベター。1人創業は燃え尽きて終わるリスクがあり、「作る人」と「売る人」との補足関係を見て対等に近いフラットな資本関係を好む。そして米国のVCは収益計画は見ない。今後3、5年の収益予想は「必然的に間違っている単なる妄想」と見られる。日本の場合は、創業初期段階であっても、売上高、人員計画、今後3、5年の収益化に向けたロードマップを作りがち。米国VCは「スピードと仕組み」に着目する。例えば最初の100人の顧客を獲得する方法などだ。「人を雇わずに、製品自体が自己増殖的に売れる仕組み」を構築できるスタートアップが今後の勝者となる。
最初の5分が全て
「チェックポイント」を突破する。米国の投資家は、最初の5分で「このピッチを最後まで真剣に聞くか」を求めている。彼らが探しているのは、優秀なプロダクトマネージャーではなく、業界のルールを書き換えるビジョナリーだ。求められるのは、プレゼンテーションの冒頭で、想像力を掻き立てるような「大胆なビジョン(強烈な大風呂敷)」を語ること。ただし、その最終目標に到達する方法を知っている理由を説明できる必要がある。
致命的なミスは、「我々のプロダクトは競合より効率的だ」という斬進撃な改善から話し始めること。
大風呂敷の広げ方は、まず必然の未来を断言する。例「10年後、この業務を人間がやっている世界は存在しません。我々がそれを終わらせます」。敵を巨大に設定する。投資家自身に「もしこれが本当に実現したら、とんでもないことになる」と計算させる。そして最初の5分間の目標は、投資家に「今すぐ参加しないと、歴史的なリターンを逃してしまう」という「機会損失への恐怖を煽る」ことだ。
最後に「日本の控えめな表現や目標設定は、米国では自信がない、ビジョンが小さいと見なされるので、あなただけが持つ「不公平な強み」を武器に、AI時代における高い資本効率を実証し、自信を持ってグローバルなストーリーを語って欲しい」と述べた。
講演後はネットワーキングの時間が設けられ参加者同士が懇談した。参加者からは「生々しい話が聞けて貴重な機会だった」「日本の学校教育では教えない内容だ」といった声が聞かれた。当日は、総合商社、弁護士、映像作家、公認会計士、報道関係者、起業家、デザイン業界など多方面の業界から若手ビジネスパーソンが参加し、熱心に聴講した。
最初の5分間のアプローチにおける日米の「伝え方の違い」
【典型的な日本のピッチ】
冒頭に会社概要、チームの経歴、丁寧な挨拶。課題の捉え方は「既存製品への不満」。話し方は「謙虚、論理的、リスクを抑えた説明」。情報の出し方は「結論(ビション)を後半に持ってくる。
【勝てるUS向けピッチ】
冒頭に衝撃的な事実、巨大な問いかけ、ビジョン。課題の捉え方は「パラダイムシフトの欠如(業界構造の破壊)、話し方は「パッション、絶対的な自信、劇場型」。情報の出し方「最初に兆円規模の未来」を見せる。

