トランプ政権がメディアに圧力を加えており、娯楽番組と政治的表現の境界、放送メディアへの規制、言論の自由などをめぐる問題となっている。
人気コメディアンのジミー・キンメル氏は15日、活動家チャーリー・カーク氏が9月10日に銃撃死したことについて、自身の番組「ジミー・キンメル・ライブ!」で「MAGA(トランプ支持派)たちがこの殺人を政治的に利用しようとしている」「(トランプ氏は)まるで4歳児が金魚を弔っているようだ」などと揶揄した。これに対し、保守派から強い反発が巻き起こった。連邦通信委員会(FCC)委員長のブレンダン・カー氏は17日、キンメル氏の発言を非難、放送ライセンス問題をほのめかしABCに対応を促す発言をした。同日、ABCとその親会社のウォルト・ディズニー社は番組の「無期限休止」を発表、放送を中止した。カリフォルニア州のディズニー本社前などでは市民らの抗議デモが発生、人権団体「米自由人権協会」(ACLU)が俳優のトム・ハンクスさんらとともに「言論の自由に対する政府の脅しは決して受け入れられない」などと訴えた。
ABCは結局、23日からの放送再開を決定。キンメル氏は復帰初日の放送で、発言について「殺人を軽視したつもりはない」「特定集団を非難しようとしたわけではない」と釈明しつつも表現の自由を重視する姿勢を強く示した。
トランプ政権は大手メディアへの圧力を強めている。特に公共放送廃止の動きが顕著となっている。
トランプ大統領は5月1日に大統領令を発出しPBS(公共放送サービス)と NPR(全米公共ラジオ)に対する連邦資金の提供を「可能な限り停止する」よう命じた。連邦議会はPBSと NPRを運営する公共放送公社(CPB)への11億ドルの予算を取り消す法案を上下院で相次いで可決、7月24日にトランプ大統領が署名し、発効した。
連邦資金の大幅削減が続けば、地方の小規模局の閉鎖や番組縮小は避けられない。CPBは8月1日、2026年1月までに業務整理すると発表した。しかし、公共放送の運営は連邦政府からの交付金だけで行われているわけではなく、視聴者や財団、企業からの寄付など複数の財源で成り立っているため閉鎖と決まったわけではない。「表現の自由」などを基に、法案の違憲性を問う訴訟も起こされている。
過去の共和党政権でも「公共放送予算ゼロ化」が何度も提案されたが、PBSの「セサミストリート」などの人気番組やNPRのニュース・文化番組を支持する声は大きく、完全廃止には至っていない。今回の動きは、長期的には全国ネットワークとしてのPBSとNPRが維持できるかどうかが焦点となっている。
また、海外メディアに対しても、報道関係者の米国滞在ビザの短縮案などを打ち出しており、報道機関への締め付けが厳しさを増している。
報道関係者のビザ短縮令
日系報道機関が意見書提出
米国に取材拠点を置く日本の主要新聞・通信・放送15社は9月26日、トランプ政権が報道関係者を対象としたビザ(査証)の有効期間を大幅に短縮する方針を打ち出したことについて、異議を唱えるパブリックコメント(意見書)を国土安全保障省に提出した。日本国内の報道によると、報道関係者向けの「Iビザ」は有効期間が現在5年で延長申請が何度も可能だが、トランプ政権は先月下旬、当初の滞在期間を240日に短縮し、追加的に240日の滞在を認めるという内容に変更すると発表した。
これに対し、日本の報道各社は、滞在期間および延長が240日に限定されれば「米国に関するニュース報道の深さや質、継続性が損なわれる」と強い懸念を表明。「入国時に2年の滞在期間を許可し、さらに2年単位で滞在延長を認め、最長期間を設けることなく複数回の滞在延長を認める」よう要求した。 第1次トランプ政権でも2020年に同様の方針を打ち出したが、バイデン政権が撤回している。今回は、トランプ政権があと3年続くこともあり、改正案を自分から撤回することはないと見られるため、前回のように真っ向から反発して抗議するというスタンスからは一歩後退しながらも、代替案としての2年を提示して落とし所を探るような内容となっている。
同提案は、日本の報道機関だけを狙い撃ちしたものではなく、中国はさらに厳しいビザ滞在期間が90日となっており、各国の足並みが揃うのかバラバラになるのかは不明だ。改正案が修正なしに240日の滞在となると、特派員や報道機関の派遣職員の業務に支障をきたすだけでなく、駐在そのものの形にまで影響を与えることになる。特に滞在期間が1年未満となればアパートの契約や帯同家族の子供の修学などにも影響が出るものと見られ、米政府がどのような判断を下すのかが予測できないだけに成り行きが注目される。

