憎悪犯罪に異変

有色人種が有色人種襲う構図に

 ニューヨーク市警(NYPD)が発表した2021年10月までのアジア系に対する年間憎悪犯罪数は124件で、昨年同期の28件から343%増加、憎悪犯罪数全体の平均増加率96%をはるかに上回っている。さらに、加害者が白人から有色人種に移行する傾向にある。NYPDによると、2019年の3件と2018年の2件の白人加害者によるアジア系への憎悪犯罪に対し、2020年以降は黒人、ヒスパニックなど非白人がアジア系への憎悪犯罪の加害者となっている。今年第3四半期だけ見ても13件中11件が黒人とヒスパニック系だ(上表)。

 「なぜ有色人種が他の有色人種を襲うのか?」1974年からアジア系アメリカ人を擁護してきたアジアン・アメリカン・リーガルディフェンス&エジュケーションファンド(99Hudson Street, 12th Fl.,NY,NY) の弁護士、スタンレー・マーク氏は今年6月に発表されたメリーランド大学のジャネル・ウォン博士の「反アジア人の憎悪事件の報告とデータ収集のレビュー2019-2021」を紹介し、1992年から2014年までは数字上で「アジア系へのヘイトクライム加害者の75%は白人だった」と指摘する。「全米統計を基にした同報告でも黒人は最も標的とされた人種で、2019年の憎悪犯罪の58%が黒人が被害者。

 長年憎悪犯罪の被害者の立場だった黒人がなぜこの2年でアジア系への犯罪の加害者として浮上したのか、学術的な調査報告はまだない。2019年には黒人人権擁護運動ブラック・ライブズ・マターがあったが、その後の黒人によるアジア系へのヘイトクライム増加との関連性は不明だ。(ワインスタイン・今井絹江、写真・三浦良一)