前進の一年

 新型コロナ禍による海外からの日本入国制限等に伴い、海外日本人に対する不利益が拡大しています。そうした中、今年は海外日本人をサポートする以下の動きがありました。

▽1月31日、昨年の総選挙での在外投票の困難さと高負担に憤慨した海外日本人が「在外ネット投票の早期先行導入」を求める2万6027筆の署名を林芳正外務大臣に提出。これに謝意を表した大臣は「2万人投票の現状を一桁増やしたい」と応えた。

▽4月1日から在外選挙人名簿登録が、ビデオ通話を通じた本人確認及び事前送付された書類の原本確認によって、遠隔地に住む日本人有権者は在外公館に出向くことなく可能となった。

▽5月25日最高裁判所は海外日本人が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは違憲とする判決を下した。また判決は投票方式の変更を示唆した。これに対し金子恭之総務大臣は「在外投票を可能とするための具体的な方策を早急に検討する」と次期衆院選までに国民審査法を改正する考えを示した。

▽9月20日河野太郎デジタル担当大臣は「次の国政選挙には(海外日本人の)選挙人登録と、できれば投票までをオンラインでできるようにしたい」と述べた。河野大臣は7月の参議院選挙前に海外日本人に在外選挙人登録を呼びかけており、在外ネット投票の支援者である。

▽2024年5月から海外日本人がマイナンバーカードを取得できることが確認された。これにより、海外日本人のオンラインでの本人確認や、さまざまな行政手続きも可能となる。これを決定した、通称デジタル手続法改正の背景説明として「将来的には在外投票におけるインターネット投票」とも記載されている。

▽在外ネット投票等に関する国会質問が増え、その結果、海外日本人の在外公館投票も郵便投票も不可能な国が23か国もあることを政府が認めた。 

〇外国籍を取得すると日本国籍が自動的に、かつ強制的にはく奪される国籍法第11条の改正を求める訴訟が脚光を浴びている。外務省は長年日本人が複数のパスポートを持つことを黙認してきたが、コロナ禍による入国制限に伴い法執行を強行するようになり、「親の死に目に逢えなかった」、「帰国した日本人が再出国すると再入国が難しい」などの直接的被害が続出していることによる。

 日本に対する愛情や誇りも高い海外日本人の皆さんに対する支援を来年はさらに高めていきたいと思います。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。