在外ネット投票早急に

海外有権者が署名活動開始

 今回の衆議院選挙で海外有権者が投票できない、投票が無効となったとみられる事例が相次いだ。世界226の在外公館に投票所が設置されたが、コロナ禍を理由に世界14か国の在外公館が投票を受け付けなかった。現行制度で有権者が海外にいたまま投票できるのは公館投票と郵便投票飲み。「地方在住者は投票所まで遠くて交通費がかかる」「郵便投票は、手続きが煩雑で多大の努力と時間を要する」などの苦情はかねてからあったが、今回の衆院在外選挙で「不便にも我慢が限界」と海外の有権者が国政選挙へのインターネット投票の早期実現に向け署名活動に乗り出した。

 在外ネット投票を求める署名活動は、有志メンバーの子田稚子さん(米国在住)、田上明日香さん(イタリア在住)、ショイマン由美子さん(ドイツ在住)が発起人で、署名作成にあたり、海外有権者ネットワークNYの竹永浩之共同代表が助言・監修した。集まった署名は近く総務大臣、外務大臣、デジタル大臣に要望書を添えて提出する。

 インターネットを通じ海外有権者に呼びかけた署名運動に対し、目標1万人に対して11月9日現在で6098人が署名している。(署名サイトのリンクへのアクセスはインターネットで「在外ネット投票署名活動」を検索)。

 署名では次のように要望している。

 (1)2022年夏の参院選において、在外邦人を対象にネット投票の実証実験を行ってほしい。そこで得られた不備や欠陥等に基づいてシステムを改善し、本格導入を準備して欲しい。(2)2025年の参院選には在外ネット投票の確実な全体運用をお願いしたい。自分の大切な一票が無効になる。これは日本にいても海外にいても、絶対にあってはならないことだ。世界中のどこにいても選挙権が一人ひとり行使できるよう、誰でも簡単に確実に投票できるよう、在外ネット投票の早期先行導入をお願いしたい。

 現在、在外有権者約100万人のうち、在外選挙人登録されているのは約10万人のみ。今回の選挙で世界全体で1万9000人が在外投票したが、前回17年の衆院選より2000人ほど減り、在外有権者の投票率は約1〜2%と極めて低い水準だ。ネット投票が実現すれば、投票数が増えることが期待できる。

 投票の際の本人確認にマイナンバーを活用する案がある。現在、在外邦人はマイナンバーカードを持てないため「マイナンバーカードを紐づける在外ネット投票は実現不可能」といった懸念もあるが、2019年に公布された「デジタル手続法」で2024年までに在外邦人にもマイナンバーカードが付与されることが決定している。

有権者の声
現行制度に限界

 在外選挙は現行制度では、海外在住者が一時帰国して日本の投票所で投票することもできるが、海外にいたまま投票するには、在外公館に出向いて投票するか郵便投票するかの2つの選択肢しかない。特に今回の選挙は解散から投開票までの期間が戦後最短の17日間で投票にかける日程が少なかった。在外選挙は公職選挙法で公示翌日から投開票の6日前までという規定があるため、今回は投票期間が長くても10月20日から25日までしかなかった。(1面に記事)。海外有権者ネットワークNYが把握している世界からの主な苦情は次の通り(抜粋)。 

▽飛行機代6万円かけて在外公館投票に1日かけていった。在外投票疲れて死にそう(アメリカ在住)”

▽投票日に間に合うように高額のDHLで選管に郵便投票を送ったが、市役所・選管側が英語表記(またはローマ字)のあて名が読めず受け取り拒否をした(イギリス在住)

▽オーストラリアから選管まで国際エクスプレスで投票用紙請求かけたが、3週間もかかったので郵便投票間に合わなかった(オーストラリア在住)

▽郵便投票何度も試して一度も間に合ったことがない。2017年から飛行機で一人あたり350ドルかけて在外公館に行っている。早くネット投票導入してほしい(ニュージーランド在住)”