編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。アメリカに住んでいると、日本人として理解に苦しむ出来事が結構あります。その一つが、大麻の販売です。日本では犯罪です。よく芸能人や運動選手が大麻を所持していたということで、大々的に報道され、逮捕された人は確実に職業上での信用を失い表舞台からは消えて行きます。一方、ニューヨーク州は、まちなかで、堂々と大麻が売られています。しかもNY州の大麻管理委員会は今月12日、大麻産業の拡大を図る新たな規制緩和を承認しました。娯楽用大麻の販売店(ディスペンサリー=薬局)の営業認可は大麻で有罪判決受けた人などに限定されていたのですが、障害のある退役軍人、マイノリティーや女性の経営者、苦境にある農家なども10月4日から薬局運営の申請を行うことができるようになりました。大麻販売店認可をめぐっては4人の退役軍人が、障害のある退役軍人よりも有罪判決を受けた麻薬犯罪者を優遇しているのは州法に違反するとして州当局を4月に告訴しました。ニューヨークタイムズ紙にも一面意見広告を出し「自分たちにも売らせろ」と言わんばかりの堂々たる主張でした。「マンハッタン、街を歩けば、大麻のかほり」という俳句ができてしまうくらい間接大麻喫煙の危険に晒されている毎日です。中毒性があり、さらに危険度の高い覚醒剤へエスカレートする大麻を合法化しているのは、その莫大な税収によるものです。国民や州住民の健康を守ることよりもお金を取った格好です。なんというあさましいことでしょう。体を蝕むことが分かっているものをなぜ州が許可するのかが分からないところです。日本の法律では、海外であっても大麻を吸ったり、買ったり、売ったり、所持していることも「処罰の対象となるので絶対に手を出さないで」と在外公館では在留邦人に呼びかけています。でも、では実際にどういう場合にその日本の法律が適用されるのかという点についてはどこにも書かれていません。「取り締まりの手の内を明かすことになるので」という理由で、紙面では記事としては表立って書けませんが、編集後記の裏話として聞き流してください。日本の法律は国内のみで適用されますから海外で逮捕されることはありません。帰国した時に空港の手荷物検査や入国審査で、何かのきっかけで別室に呼ばれた時に「ところでアメリカでは、簡単に大麻とか吸ったりできるようだけど、友達とかで吸ってる人いる?吸ったりしたことあります?」とカジュアルに聞かれて嘘はついてはいけないと思い正直に「そうですね、パーティでちょっとだけ」と使用を認めた瞬間、その段階で即逮捕となります。日本で大麻を所持したり使用したのと同じ犯罪として処罰されます。なので、このNYの合法化の流れの中で、アメリカ人との交流の中でたまたま吸ったことのある人は気をつけて、とは表立って言えませんが、現実はそういうことなのです。「それなら最初からそう言ってよ、分かってれば吸わないんだから」と言っても後の祭り。二重国籍の問題と同じで、アメリカ市民権を取得すると自動的に日本国籍を失うという日本の法律を知らないまま米国市民権を取得した人が「自分は日本人ではないことになって」に困っていますが、「知らなかったでは済まされない」と国は言うけど、だったら「先にしっかり知らせてよ」と言いたいところです。「合法と、思って吸ったら、帰国で逮捕」また一句、つまらない句ができてしまいました。こんなことにならないように気をつけましょう。「君子危うきに近寄らず」がよろしいようで。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)