野球で北米結ぶ友情の絆 四国アイランドリーグplus

米カンナムリーグ6強豪と20試合予定
坂口理事長に遠征の抱負聞く

 日本のプロ野球独立リーグである「四国アイランドリーグplus」の選抜チームが、2016年に続き3度目の北米遠征のため来米する。6月中旬からニューヨーク、ニュージャージー、そしてカナダのケベックで米国のベースボール独立リーグ「カンナムリーグ」に所属する現地の6強豪チームと公式戦20試合を行う(本紙6月8日号既報)。四国アイランドリーグplus理事長の坂口裕昭さんに北米遠征の抱負を聞いた。
(聞き手・本紙 三浦良一)

本紙—9年前に四国とのかかわりができたきっかけを教えてください。
坂口—もともと企業再生などを扱う弁護士をしていましたが、2011年当時、経営危機の状況にあった四国アイランドリーグplusに所属する徳島インディゴソックス球団の立て直しを依頼され、引き受けさせて頂きました。私自身、子どものころから野球などのスポーツを通じて様々なことを学んできましたし、これからの日本の将来を考えた時、少子高齢化など多くの社会的な課題を抱える四国という地域で、スポーツを核に社会課題を解決する一助になれればと考え、挑戦することを決意しました。

本紙—四国アイランドリーグが他県の野球チームと違うところは何ですか?
坂口—我々の強みは、ずばり、創設から14年をかけて少しずつ築き上げてきた、四国の皆様との絆の強さです。まだまだ発展途上ではありますが、四国の皆様との強い絆をベースにして、単に野球の試合をするというだけではなく、社会課題の解決や周辺ビジネスの拡大という観点を強く意識した運営を心掛けており、この点が我々のリーグを特徴付けているのではないかと考えます。今回の遠征に象徴される海外との関係構築も、この運営方針に沿うものです。
本紙—今回の6月からの米国遠征で最も大切にしていること、重視しているのは何ですか
口—まず、一つ目は、選手たちの成長、という観点です。代表チームに選ばれた選手たちには、野球の本場で高いレベルの競技力に触れるとともに、慣れない環境の中で、一人の社会人としての人間性及び国際感覚を養って欲しい、と考えています。もう一つは、先に繋がる国際関係の構築、という観点です。単発のイベント事業として終わらせず、試合や様々な交流イベントを通じて、現地の皆様に、四国各県や日本の文化を肌で感じて頂き、この先も実際に、文化交流、ビジネス交流が続くような仕組みを作りたい、と考えています。
本紙—四国アイランドリーグplusが野球を通じてできる人と文化との結びつきについてお聞かせください。
坂口—単に野球の試合だけをしていても、本当の意味での文化的な交流は生まれないと思います。選手たちがスタジアムの中でお客様に最大限のファンサービスをするのはもちろんのこと、我々スタッフも含めて関係者全員が、スタジアムの外にも飛び出し、地域の皆様と直接触れ合うことではじめて文化的な交流は生まれます。
 野球などのスポーツが有する本質的な価値とは、あらゆるボーダーを飛び越えて、人と人が分かり合えるツールになり得る、という点にあると考えます。我々のリーグは、この価値を最大限活かせるような運営を心掛けています。
本紙—リーグの社会的役割は何だと思いますか?
坂口—単にスタジアム周辺で賑わいを創り出したりするだけではなく、実際に地域が抱える課題を主体的に解決できるような役割を果たさなければならないと考えています。たとえば、日本、特に、我々がホームグラウンドとする四国という地域では、少子高齢化が進んでいます。こうした環境の中で、子どもたちに夢を持ってもらえるように、挫折から這い上がってスターダムに躍り出るような選手を育成したり、高齢者の皆様が健康を維持できるように、生涯スポーツを推進するような活動に貢献したり、地域に経済的なインパクトをもたらせるように、周辺ビジネスの領域で新規事業を生み出したり・・・
こういった一つ一つのことを、景気に左右されることなく、地道に続けていくことこそ、我々に与えられた使命、社会的役割だと考えています。
本紙—リーグの選手育成実績についておきかせください。
坂口—我々は、リーグが創設された2005年から2018年まで14年連続で、合計62人の選手を日本のトップリーグに送り出しています。中には、日本代表チームに選出されたり、トップリーグで首位打者のタイトルを獲得したり、1軍に定着してコンスタントに結果を残したりするような選手も出てきました。
本紙—地域貢献活動についてどんなことをされてきてますか
坂口—我々のリーグに所属する選手たちは、野球で試合に出るだけではなく、毎年、四国全体で、年間を通じて700回以上の地域活動に参加しています。その内容は多岐に及び、地域の子どもたちを対象とした野球教室のほかにも、地域の皆様と一緒に清掃活動を行ったり、地元のお祭りに参加したり、高齢者の皆様に交じって農作業のお手伝いをしたり、地域のあらゆるところに顔を出し、対話をし一緒に汗を流しています。
本紙—海外遠征で、選手たちに期待することはなんですか
坂口—とにかく、全てに好奇心を持って、ポジティヴに捉え、真正面から課題と向き合うことにより、壁を乗り越えていって欲しいと思います。
本紙—試合を応援する米国在住の読者のみなさんに一言お願いします。
坂口—我々のリーグに所属する選手たちは、日々、夢と現実の狭間でもがきながら、頂点を目指しています。足りないところも沢山ありますが、人間味に溢れ、大きな夢を持っています。そんな選手たちが、がむしゃらにプレーする姿を応援しに、ぜひ、スタジアムへ足をお運び頂ければと思います。スタジアムでは、我々が四国で毎試合行っているように、試合後、選手たちがゲートで直接皆様をお見送りさせて頂きます。その際、一言でも、選手たちにエールをお送り頂ければ、望外の喜びです。我々スタッフを含め、代表チーム一同、皆様とお目にかかれる日を心待ちにしております。