ヘリ白昼のビル街墜落

マンハッタン中心部
屋上に激突し操縦士死亡

 マンハッタンの高層ビルの屋上に10日午後1時45分頃、ヘリコプターが墜落した。乗っていたのは操縦士のティム・マッコーマックさん(54)1人で、即死した。同日は朝からの雨で、摩天楼は激しい雨と濃霧で上空は視界ゼロに近い状況だった。事故の数分後に消防員が到着、同ビルや近隣ビルの人を避難させ、大破したヘリコプターの炎上はすぐ消火された。
 事故現場は7番街787番地、51丁目と52丁目の間にある54階建て「AXAエクイタブルセンタービル」の屋上で、同機はマンハッタン東34丁目にあるヘリポートから駐機場であるニュージャージー州のリンデン空港に帰る予定だったが、離陸した11分後に同ビル屋上に直撃した。複数メディアによると、離陸5分後に、同ヘリポートに「霧で航路が分からないので、引き返す」と連絡していた。連邦航空局(FAA)によると、マッコーマックさんは計器飛行証明を持っておらず有視界飛行のみの免許。同機は同日朝、同州ウエストチェスターから乗客1人を乗せ、マンハッタンまで飛び、霧が晴れるのを2時間ほど待っていたという。航空法規ではマンハッタン両側の川上空は高度1000フィート(約50階建てビルの高さ)を飛行するが、マンハッタンを横切る場合はさらに高度が必要だ。
 マコーマック操縦士は、不動産関連会社「アメリカン・コンチネンタル・プロパティー」付の個人所有ヘリコプターの操縦士として勤務5年目で、飛行歴の長いベテラン操縦士だった。リンデン空港長は、「これは着陸ではなく激突。操縦士は大変なことになるのを予想しただろうが覚悟して、最良の場所を選んだのだと思う。」と、その死を悼み、遺族も「彼は多くの人を巻き添えにしないようにした。ヒーローだ」と話している。
 同ビル7階にいた人は「小さい地震のようだった」と、5階にいた人は「マンホールの蓋が爆発したような音がした」と話している。また、東20丁目付近での目撃者は、「ヘリコプターが非常に低く飛んで、上がったと思ったら下がったのでイーストリバーに突っ込むと思ったが、そのまま北へ飛んでいった」話している。ニューヨーク州のクオモ知事は事故直後に「テロの可能性はない」と発表、テロとの不安を抱いた市民を安心させた。 
 マンハッタンでのヘリコプター墜落事故は5月15日に続きこの1か月間で2度目(週刊NY生活5月25日号既報)。利用客は観光飛行や週末のハンプトンの別荘への飛行、空港間の飛行などが主。2016年にニューヨーク市はヘリコプター企業との話し合いで、年間6000回を超える飛行を半減することを妥協させた。事故は珍しいものの、市民からの騒音や発煙に対する苦情は多い。