吉田実代執念で米国初戦飾る

NYタイムズスクエア

 プロボクシングの元WBO女子世界スーパーフライ級王者の吉田実代(35)が4月27日、タイムズスクエアのソニーホールでインデア・スミス(26)に判定勝ちし、米国初戦を飾った。

 3分8ラウンドの試合、序盤から激しい打ち合いの応酬となった。対戦相手のスミスが最初にリングに上がった時は、体格差で身長やリーチのある吉田が俄然有利に見えたが、ゴングが鳴ると1回からバチバチの打ち合いに。吉田は前に出る攻撃でスミスの踊るような連打をかわしながらジャブ、ストレートを的確に入れていくが、中盤の接近戦でスミスを抱え込んでしまい審判から注意を受ける場面も。終盤はセコンドからの前に出て攻撃をするよう大きなゼスチャーで指示され8回最終ラウンドではスミスを圧倒するパンチで相手の動きを止め試合終了のゴング。判定の結果審判長が吉田の手をあげた時、吉田の頬に熱い涙が流れた。吉田にとってはこの一戦の勝利は何よりも大きかった。2019年にWBO女子世界スーパーフライ級王座を獲得するも昨年5月に防衛戦で判定負けとなり王座を手放している。その時点で34歳。闘うシングルマザーとして7歳の娘を育てながらの現役生活を続けたが、日本でモチベーションを高く保てる対戦相手に恵まれず対戦相手を海外に求め、ブルックリンにあるマイクタイソンなどを輩出した名門ジムの「デビラ・エンターテイメント」と昨年契約を結んだ。

 リングで司会から勝利の感想を聞かれた吉田は「自分は鹿児島で生まれ、決して恵まれた家庭環境で育っていないが、それでも諦めずに自分の可能性を信じてチャレンジしてきた。これが後に続く人たちの勇気になることを祈っている」と話し、笑顔で娘の実衣菜(みいな)ちゃんとリングで抱き合った。トレーナー不在のなか東京に自宅のないまま知人宅を渡り歩き、試合まで調整することになり、試合までの減量や練習はかなり苦労したと言う。今回24時間経由でNYに到着した。2日で残りの体重を落として着いて3日目に計量、4日目に試合という普通ありえない過密スケジュールで闘い、計量前から満身創痍だった。渡米ビザが遅れ2月の試合を流してしまったこともあり、「興業側デビラ側の期待に応えたかったから言い訳はしないと決めて腹を決めて、やり通せた。セコンドともぶっつけ本番だったが、私の勝ちたい気持ちと周りの勝たせたい気持ちがうまくシンクロして気迫で勝ちにいけたと思う。一年ぶりの試合にこのコンディションとこの状況で勝てたことは自分にとっては収穫が大きいです。課題も、もちろんありますが次戦は充分コンディションを整えて試合間隔も空けずに試合をどんどんこなして強くなっていけたらと思っています」と本紙に語った。

(三浦良一記者、Photo Takako Ida )