アジア女性に正義を

ヘイトクライム差別
声を上げて止めて

 アジア系アメリカ人へのヘイトクライムが深刻化している。昨年1年間に5人に1人がヘイトが原因の事象に巻き込まれたという数字があるほどだ。

 アトランタで8人が殺害された事件から1年となる16日、「アジア系女性に正義を」と題された集会が全米12都市を結んで同時開催された。主催したのはスタンド・ウィズ・アジアン・アメリカンなど複数の団体。ニューヨークではタイムズスクエアに約250人が集まり「アジア系へのヘイトをやめろ」などのプラカードを掲げた。全員女性で構成された登壇者の1人でアジアン・アメリカン・フェデレーションのジョアン・ユー氏は「私たちアジア系もアメリカ人。安全に暮らせる権利がある」と訴え、キャシー・ホークル州知事は「ニューヨーカーが一致団結してアジア系へのヘイトを終わらせよう」と宣言した=写真右=。

 アジア系の中でも女性は74%が差別を経験している。そのため多くが公共交通機関を避けたり、隠れるようにして不安の中で生活していると涙ながらに語ったのは、ベストセラー小説『パチンコ』の著書ミン・ジン・リー氏。「憎まれるのは自分たちのせいと考えてはいけない」と訴えた。登壇した3人のヘイトクライム犠牲者の1人エスター・リー氏は「沈黙を破ろう、私たちは弱くない」と力強く語った。

 スピーチと共に音楽の演奏も行われた。ニューヨーク在住のビッグバンド作曲家で指揮者の宮嶋みぎわさんは、この日のために書き下ろした曲を披露、和太鼓やバイオリン、サックス、トランペットの音色と共に観客の歌声が1つになってタイムズスクエアの夜空に響いた=写真左=。演奏を終えたみぎわさんは「日本以外のアジア系の人たちとここまで深く本当のこころの繋りを持てたと感じたのは今日が初めて。歴史的な日になるだろう」とイベントを振り返った。聴衆の1人中国系アメリカ人の大学院生スザンナさんは「アジア系にとって今のニューヨークは恐ろしい場所。変えるために団結したい」と語り、その友達のキャスさんは「 アジア系ではないけれどアライ(同志)としてサポートしたい」と意気込んだ。     

 主催者の代表としてインタビューに応じたフランクリン・シェン氏は「全米のアジア系が結集したのは快挙、しかしヘイトクライム犠牲者が声を出すのは簡単ではなく問題も山積みだが、確実な変化を起こしていきたい」とコメントした。

 イベントの模様はストリーミング(https://youtu.be/nYKDmKAelXg?t=24633)で見ることができる。(シェリーめぐみ、写真・植山慎太郎)

(写真) 「声をあげよう」タイムズスクエアでアジア系女性へのヘイトクライムに抗議する集会