リボンの騎士にあこがれて

フェンシング
ベテラン世界大会日本代表

石黒かおるさん

 幼い頃、好きだったテレビ・アニメは「リボンの騎士」。40歳を過ぎてからニューヨークでフェンシングを始めて15年。フェンシングのことなど何も知らない全くの初心者だった。ニューヨークでは朝日新聞ニューヨーク支局でスポーツ部のアシスタント記者をしていた。毎朝各米紙のスポーツ欄に目を通すのが日課だった。2008年の北京オリンピックの直前、USA TODAY紙のスポーツ欄に41歳で北京オリンピックに出場する女子水泳選手と39歳で出場する女子フェンシング選手の記事があった。「40歳でも若い選手を抑えてオリンピックに出場する女性がいるんだ、すごいなー」と感心した。自分も、もしかして、今から何かを始めたらオリンピックとはいかないまでもどこかのレベルまでいけるだろうか?ふと、そんなことが頭を過ぎった。しかし水泳選手のピーク年齢は10代、フェンシングならなんとかなるかな?そんな単純な思いつきでマンハッタンのフェンシング・クラブを探して、記事を読んだその日のお昼休みにはオフィス近くのフェンシング・クラブ「Manhattan Fencing Center」のドアを叩き、次の日から大人のフェンシング初心者クラスに参加した。しかし、すぐにフェンシングというスポーツの難しさに直面する。フェンシングはスポーツのチェスと呼ばれているほど、頭脳プレイのスポーツだ。これはダメだとくじけそうになった。そんな時、フェンシングのコーチが石黒さんに向かって大声で叫んだ「You look like you never fight for your life」その言葉は痛かった、なぜなら図星だったからだ。「私はいつも困難なことに立ち向かうとその場所から逃げていたのです」。コーチにすぐにそれを見抜かれた。「よーしそれならば、ここで踏ん張ってがんばってみよう」。最初はスポーツジムに通う感覚で週に1度のクラス通い、その後、フェンシング仲間もできローカル試合にも参加するようになった。ある日、日本人のフェンシング仲間から日本代表でベテラン世界大会に一緒に出ようと誘われた。「とんでもない」自分はそんなレベルではないとは思ったが日本で行われた予選会に参加して、ベテラン・フェンシング世界大会への出場権を得た。

蟻と象の戦いと言われた試合

 その後、フランス、ドイツ、スロベニア、クロアチアで行われたベテラン世界大会に日本代表で出場。今年10月にはフロリダのデイトナビーチで行われた、ベテラン・フェンシング世界大会にもサーブルとエペの種目で出場した。世界大会には80歳を過ぎても参加している人もいる。体力と気力が続く限り世界大会に挑戦したいという。今年、文化の日の11月3日、実家のある埼玉県戸田市でスポーツで功績を残した人に与えられるスポーツ功労で表彰された。(写真は本人提供)