アートをNYファッション週間で披露

京都大学特定教授

土佐 尚子さん

 京都大学防災研究所アートイノベーション産学共同研究部門の代表を務める土佐尚子特定教授が11日、マンハッタンで、セイコーエプソンとの共同研究の成果としてデジタル捺染で作った服をNYファッションウィークで披露した 。斬新な色彩が飛び散ったデザインの衣装をまとった24人のモデルたちが颯爽とランウエーを歩いた。

 今回のファッションショーでは、赤ちゃんの産声などの声の振動を絵の具などの流体に与え、ハイスピードカメラで2000分の1秒で撮影し、その造形がいけばなの型のアシンメトリーな三角形に似ていたので「サウンドオブ生け花」と命名した。これまで自然の中に潜む美を技術を用いて取り出してアート作品にする活動に興味を持ってきた。その代表作が、ビデオアート「サウンドオブ生け花」だった。自然に隠された美を取り出して表現しているため、「日本美を感じる」と多くの世界の人から評価された。実在の生花とは直接関係のない、いわば実験的な産学連携の試みだったが、最初にその理念に理解を示し、ファンになってくれたのが、いけばなの家元である池坊専好次期家元だった。自然を表現することと、それを身に纏うことの本質的な共通点を見出してのことだ。

 1985年に作成した映像作品がニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵され、文化庁文化交流使の際には、タイムズスクエアのビルボード60台に1か月毎夜3分間映像を流す文化交流も行った。そんなアーティストでもある土佐さんはショーの後、「サウンドオブ生け花は、抽象的・有機的な形状のため、性別・年代を問わず着ることのできるジェンダーレス、エイジレスな性質を持っていてSDGsの観点からも好ましいファッションといえます。私はファッション業界の人間ではないですが、今回こうして招かれ、作品を紹介させていただいたわけです。これは大学の産学連携の一つの成果として出したもので新しい価値を創造することを我々、素人集団に委ねられたわけです。肉眼では見ることのできない自然界にあるもの、声の振動、命を着る、元気を着る、勝負服の新しいものを積極的に見てくれるそんな作品を私の第二の故郷でもあるNYで披露できてとても嬉しいです」と語った。(三浦良一記者、写真も)