在NY日本人アーティストの世話人

NY日本人美術家協会会長

松田 常葉さん

 ニューヨークで最も古い日本人アーティスト団体、ニューヨーク日本人美術家協会(JAANY)の会長に今年就任した。

 「この団体は初代会長の飯塚国雄さんを中心に、1972年に設立されました。当時、日本は高度成長期でしたが、米国に来た日本人は、1ドル360円、厳しい外貨持ち出し制限、国際電話も超高価格、パソコンもネットもなく限られた情報だけという環境下で暮らしていた時代です。敗戦国日本からニューヨークに来た若いアーティストたちがどれだけ大変な思いをしたか想像に難くありません。それだけ芸術をめざす日本人同士のきずなは強く、お互いに助け合って生活していたと聞いています。飯塚さんはそれをさらにNPOという形にされました。アーティストというのは、昔も今も同じですが、我が強くその人なりの信念をもって生きています。組織の構成員としてはなかなか難しそうです。そういう人達を集めてまとめ上げ、初めての日本人アーティストのNPOを作り維持するのは並大抵のことではなかったと思います。飯塚さんはそれをやってのけました。苦労話もしばしば聞かせてもらいましたが、偉大な方だったことを改めて感じています」と重責を今ひしひしと感じている。

 生まれは北海道滝川市だが育ったのは群馬県桐生市。小さい時から絵を描くのが好きで、いろんな絵画の賞を取ったが、厳格な家に生まれ、好きなアートの道には進まずに北海道大学文学部を卒業後、東京で大手化粧品消費材メーカーの花王に就職、マーケティング調査の仕事に携わった。時代は80年代、まさにバブルまっさかり。次第に、物質文明全開の日本の浮かれた気分になじめず、自分の人生の行き場を見失った。アートの世界にはいる出会いもあり、好きで描いてきた絵の世界にはまりこむことになる。そこから、ニューヨークにつながる。来米したのは1990年。アートスチューデントリーグで油絵を描いていたが、その後、ニューヨーク市立大学ハンター校を卒業してMFA(美術修士)を取得。現在は米系の全米版画家協会、ボストンプリントメーカーズ、全米女性芸術家協会でも活動しており、2016年には同会主催の展覧会で金賞を受賞している。今は、9月1日から16日まで天理協会ギャラリーで開催されるJAANYの第49回アニュアル展の準備に追われる毎日だ。(三浦良一記者、写真は本人提供)