その6:フィールド・オブ・ドリームス

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは! あっという間に8月が過ぎ、レイバーデイ休暇が過ぎ、サンクスギビング休暇まで最後の踏ん張り所となりましたが(笑)、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。7月、8月と筆者にとっては仕事上の「ちょっと多忙な転換期」であったため、中々本業? であるルート66の活動に時間が費やせず、何と毎年恒例のメイプルシロップを注文することも忘れてしまった始末。記憶の良い読者の皆さんは憶えていらっしゃるかもしれませんが、イリノイ州ファンクスグローブで造られるメイプルシロップは世界一! というお話を以前このコラムで紹介しました。またこの話はいずれ機会を見て詳しくお話しします。
 先日「デモイン・レジスター」というアイオワ州デモインで発行されている地方紙にて、MLB(メジャーリーグベースボール)は来年、ニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスの試合を何とアイオワ州ダイアーズビルで開催することを発表しました。「アイオワ州ダイアーズビル」と聞いただけで、あれ!?と思った方はかなりのベースボール通(いや映画通といった方がいいかもしれません)です。そうです、1989年に公開されたケビン・コスナー主演の名作「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台となった街ですね。というわけで、今月の魅惑の旧街道を行くシリーズのシーズン③ 第6話は、「American Pastime(アメリカの娯楽)」、ベースボールの話をしたいと思います。
 映画をご覧になった方は記憶に残っていると思いますが、この映画の撮影にあたって、ダイアーズビルは実際のベースボール球場を建造しました。撮影終了後は土地の所有者によってしっかり保存され、この原稿を書いている「今」でも無料で入れる(許可をとれば実際のプレイも可能)ベースボールと映画ファンにはたまらない「聖地」なのです。とは言ってもこの映画、1960年代をキーワードとして夢や希望、家族の絆といった、アメリカで讃えられる美徳を描き上げたファンタジーものであって、ベースボールはあくまでも題材に過ぎないのですが、筆者のようなベースボール・ファンにもとても訴えかける作品であることに変わりはありません。え? 今回の話、ルート66と何の関係があるのかって? そもそもアイオワ州はルート66が通ってないですよね(笑)。
 実際の話、「Field of Dreams」という名前のベースボール(に限らず)球場は全米に幾つか存在します。多数の州で「Broadway」を見るのと同じ原理です。しかし、カンザス州バクスタースプリングスにある「フィールド・オブ・ドリームス」は一見の価値のあるカンザス・ルート66の名所のひとつと言って良いでしょう。スタジアムの正式名称は「Don Karnes Stadium」といいますが、正面入り口にはそれより大きな字で「Field of Dreams」と書かれています。スタジアムと言っても、座席はなくコンクリートでできている段に座るか、立ち見です。なぜ? それはマイナーリーグがプレイするわけでもない、少年野球や地元の兄ちゃんらがプレイする公共施設なのですから。(笑)でもボランティアの人でしょうか、きちんと芝の整備や施設の掃除をする方々がいらっしゃっていつもキレイでReady To Goの状態になっています。
 カンザス・ルート66は、いつもお伝えしているようにたったの17マイル(27キロ)しかありませんが、そのなかにガレナ、リバートン、そしてバクスタースプリングスとそれぞれの顔を持つ魅力的な3つの街があり、筆者の大好きなローストビーフ・サンドイッチを出してくれる友人スコットのお店や、このフィールド・オブ・ドリームスが存在し、個人的には最も好きな州のひとつなのです。カンザス・ルート66は州の南東端をかするように通るので、カンザスシティーからも車で7時間程度かかるという、とても便利とは言えない場所にありますが、オクラホマ州タルサ、またはミズーリ州スプリングフィールドからは数時間で行けますので、ぜひ皆さんもドライブして「アメリカの娯楽」を感じてもらえればと思います。
 話をアイオワ州のフィールド・オブ・ドリームスに戻しますと、試合予定日は2020年8月13日。現在まだ確定していませんが、1試合だけでなく2試合やるかもしれないとはMLBの談。その施設には約8000席程度を設けることや、ベースボール・クリニックの開催などを予定しているそうですが、肝心のチケットに関してはまだ発表がありません。どうしても観たい方はMLBの公式サイトを毎日チェックするしか当分手はなさそうですね。とはいえ、日付は決まっているので周辺のホテルを押さえることは準備できるのではないでしょうか。筆者も東京から飛んでいくのか、悩ましい夏休み終盤の今日このごろです。それではまた来月お会いしましょう!
(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表、写真も)