宗派超えて平和活動続ける

NY平和ファウンデーション代表

中垣顕実さん

 NY平和ファウンデーションの代表、中垣顕実さん(62)は、1994年からニューヨークで毎年8月5日に広島・長崎原爆法要「NYインターフェイス平和の集い」を主催し、2002年からは9月11日にハドソン川での9・11同時多発テロ犠牲者追悼灯ろう流しを10年間企画するなど、仏教の精神に基づいた平和を訴える活動を展開している。今年の原爆式典をニューヨークで開始して30回目となることもあり「NY平和の集い」を8月5日、8日、9日の3日間に分けて開催することにした。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年5か月、戦況は長引き、北朝鮮も核兵器の使用をはばからない姿勢を見せるなど、世界中で核兵器の脅威が高まっている。その中で、唯一の被爆国である日本が核兵器廃絶の声をこれからも強くあげていかなくてはならないという思いは強いが、核兵器禁止条約に日本は参加していないことに、海外に住む日本人として、宗教家として釈然としない思いが募る。日本の被爆者が声をあげてきたことで、ようやく発効にこぎつけた核禁止条約なのに、被爆国である日本が参加しないことが整合性に欠けていることは誰が見ても明らかだ。

 「日本では広島と長崎の被爆者が声をあげているが、海外から見たら原爆は広島・長崎というより、日本に落とされたと見る。被爆は日本のものとして考えていかなくてはならないことを痛感している。核兵器は戦争の抑止力というが、どんどんエスカレートしていき、人類と地球にとって取り返しのつかない危険を膨張させている。戦争の当事者は、敵の言うことを信じない。疑心暗鬼となり、大きな間違いをもたらす危険は日に日に高まっている」と危機感を募らせる。

 機能不全に陥って戦争を止めることができない国連に無力感を覚えつつも「いま世界中の国が集まって話し合える場は国連しかないのも事実。対話を続けることだけが戦争を回避できる。聖徳太子の17条の憲法にある『和を以て貴しとなす』は平和を、『忤(さから)うことなく』は非暴力、傷つけない、殺さないという仏教の思想の根源を成す考え方」であり、武器をもって、力ずくで平和を築くのではなく、対話、互いに尊重し合い、相互理解を通しての平和でなければならない。それを受けて今年NY式典で鳴らす平和の鐘(山口久乗寄贈)には「和貴無忤」という文字が刻まれている。

 今年も、宗派を超え、仏教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教らが集まり、音楽家や舞踏家がコンサートを行い、原爆展や平和アート展に、1時間にわたる原爆をテーマにした演劇『父と暮らせば』を加えている。祈念やアートを通して、国境を超え、アメリカ人、日本人、様々な人種が集い、平和のメッセージをそれぞれの立ち位置から発信していく。「今年の8月5日、8日、9日には皆さんも足を動かして、それぞれの会場に来て、平和のエネルギーを心身で感じてもらいたいのです。ニューヨークから日本へ、アメリカへ、そして世界へ向けて、皆様と共に平和の鐘を響かせていきたいと思います」と話す。(三浦良一記者、写真も)


 大阪出身。1983年に京都の龍谷大学仏教史学科卒業。大阪府高槻市にある行信教校で梯實圓師より真宗学を学び,1985年に海外開教使として西本願寺より北米開教区に派遣。最初の寺はシアトル別院(1985年ー1989年)、カリフォルニア州フレスノ郊外パレア仏教会(1989年ー1994年)を経て、1994年にニューヨーク本願寺仏教会へ赴任。2010年2月に米国仏教団から勤続25年の表彰を受け2018年にNY平和ファウンデーションを創設、代表に就任。著書に『ニューヨーク坊主、インドを歩く』(現代書館、2003年)と『マンハッタン坊主、つれづれ日記』(現代書館、2010年6月)、「卍とハーケンクロイツ』(現代書館、2013年6月)がある。