海外日本人サポート(5)藤田幸久
① 山浦善樹元最高裁判事の英国在住の小学生の孫が、領事館から「パスポートの更新はできない。日本国籍を本人の志望により放棄する、との書類を提出すべし」と迫られた。② 米国在住近藤ユリ弁護士が、日本パスポートの更新を拒否されたため、新型コロナの影響で、帰郷中の日本から出国すると日本に帰国できない状況にある。③「親の死に目に会えなかった」「日本の親族を訪問したいが、国籍喪失届を提出しない限りビザは出せないと脅された」などの悲鳴が続出している。
海外日本人に対するこれらの仕打ちの根拠は国籍法11条1項「日本国民は自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」です。日本国籍を維持したいか否かの意思に関わらず、強制的に国籍が剥奪(はくだつ)されるのです。外務省は長年両方のパスポートを持つ日本人を黙認してきましたが、コロナが発生するや、上記の仕打ちを強行するようになりました。
山浦善樹元最高裁判事は「孫の日本国民としての権利保障がされない、母国から排除される法律だ」と批判しています。近藤ユリ弁護士はこの国籍法は憲法違反だとする訴訟を起こしました。スイス在住の野川等さん他は、外国籍を取得しても自動的に日本国籍を失うのではなく「日本国籍を保持するかどうか当人が選択できる」よう国籍法第11条の改正を求めています。「国籍法第11条改正を求める有志の会」はこれを支援するオンライン署名活動を行っています。
実は日本政府は真逆のことも行っています。ノーベル賞受賞者の南部陽一、中村修二、真鍋淑郎、カズオ・イシグロさんなど日本国籍の無い方々を日本人として賞賛しているのです。近年も岸田文雄首相が真鍋教授を「日本人として大変誇らしい」と持ち上げました。これらの方々の日本国籍を奪っていたにもかかわらずです。テニスの大坂なおみさんには多重国籍から「外国の国籍を放棄します」と印刷された国籍選択届に署名・提出させたのです。
海外日本人ほど、日本に対する愛国心や日本に対する貢献の気持ちが強いものです。学術やスポーツなどで活躍する海外日本人に一つの国籍を強いること自体が日本の国益に反します。海外日本人の皆さん、国籍法を正す活動へのご支援をお願いいたします。
ふじた・ゆきひさ=水戸一高、慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。対人地雷禁止条約加盟、アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。世界52ヵ国訪問。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。