作曲家の意思を聴衆と共に表現する

マリンバ奏者 名倉 誠人さん

 神戸市出身でニューヨーク在住の世界的日本人マリンバ奏者、名倉誠人が4月15日午後7時30分から、フォレストヒルズのザ・チャーチ・イン・ザ・ガーデン(アスキャン街50番地)で演奏する。当日は、ピアニストのバーバラ・ポドゥグルスキーとデュオのための委嘱作品、デイビッド・コントとフィリップ・ラッサーの新曲など名倉のために書かれた曲とバッハの作品を名倉自身が編曲した曲を披露するものでソロ・マリンバ奏者・名倉誠人の特性を活かしたコンサートとなる。

 この演奏会は2000年に設立されたムジカ・レジネ・プロダクションズ(MRP)が、クイーンズのコンサートスペースを使い、革新的なプログラミングと世界的なアーティストを紹介するため2022年から23年にかけて開催するコミュニティ・コンサート・シリーズの一環。名倉がこのシリーズで演奏するのは4回目2年ぶり。

 名倉は、これまで四半世紀にわたり、世界15か国で演奏活動をしてきており、米国では、カーネギー・ワイル・リサイタル・ホールやケネディー・センターなどでのリサイタル活動に加え、NY室内管弦楽団、ロサンゼルス室内管弦楽団など、多くのオーケストラとも協奏曲を共演し、その活動は全米41州にわたっている。

 教育活動にも情熱を注ぎ、世界各地の大学をはじめ、全米70校の大学で、マスタークラスを行うなど精力的に活動し、小・中・高等学校を訪れ、多くの子供達のために演奏してきている。日本でも京都市立芸術大学では6年間にわたり教鞭を執った経験がある。

 パンデミックの3年間は新しいレパートリーを作ったりレコーディングをしたり、コンサートもリモートが多かったが、ようやく対面での演奏ができるようになった。「演奏家というのは一方通行ではなくて聴衆と一緒に音楽を作っているということが生の演奏会の醍醐味なんだということを痛感しました」と話す。

 小学校3年生の時にマリンバの音に出会って、自分はこれで行くと決めたという。和音と旋律を同時に演奏する四本撥奏法は今でこそスタンダードだが、当時はまだ革新的。その音の深さとリズムの響きに魅了された。武蔵野音楽大学、英国王立音楽院で学び94年、ニューヨークで開催されたヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションで、マリンバ奏者としては世界で初めて優勝。ニューヨークとワシントンでデビュー・リサイタルを行い高い評価を受けている。

 「演奏家というのは、作品があって、それを自分がどう表現するということなんで、作曲家の意思をどう伝えるか、表現するか、そして最終的にお客さんとどうコミュニュケートしていくことになっていくわけなんです。伝える内容は、曲によってかなり違うので、音出すだけだったら誰でもできるんですけど、楽譜に書かれている音符をいかに生きているものにするのかというのが音楽家である私達の仕事なんです。活かし方は色々な経験を積まないと自分の声として生きたものにならない」とも語る。

 今回はバッハの曲を披露する。「バッハの音楽は、特定の楽器を想定して書いていない。今回演奏する曲はもともとチェロを演奏するために書かれた曲だが、楽器を変えてもその音楽が崩れることはない。それくらいバッハの曲は堅牢にできているんですね。バッハが生きていた頃にはもちろんマリンバはなかったので、自分の曲がマリンバで演奏されるなんてきっと夢にも思ってないでしょうね」と笑顔を見せる。今回の演奏会では、日本の作曲家でクラシックも商業音楽も手がける川辺真作曲の「エバグリーン」も演奏する。「キン肉マンやうる星やつらなどのアニメ主題歌を作った川辺先生のクラシック曲もぜひ楽しんでください」とコンサートを紹介した。 (三浦良一記者、写真は本人提供)

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 演奏会は4月15日。入場料は学生10ドル、一般20ドル。オンライン購入は下記のリンクから。

https://www.eventbrite.com/e/dual-keyboards-with-internationally-acclaimed-marimbist-makoto-nakura-tickets-410525100627