バスキア展始まる

グッゲンハイム美術館
心の格闘と社会へのメッセージ

 グッゲンハイム美術館(五番街1071番地)で6月21日、ジャン=ミシェル・バスキア展「ディフェースメント:アントールドストーリー(Defacement: Untold Story)」が始まった。バスキア自身の作品は少なめだが、キース・ヘリングやアンディ・ウォーホルなど、マイケル・スチュワートの悲惨な死を題材にした作品がならんび、全体としてバスキアが題材にしたアクティビズムとアイデンティー、彼の心の格闘や社会へのメッセージが詰め込まれている。 
 その事件は1983年、地下鉄ユニオンスクエア駅でおきた。黒人グラフィティアーティストのマイケル・スチューワートが深夜、落書きをしているのを警察に見つかる。数時間にわたる警察との争いの後、スチュワートは手足を縛られ、昏睡状態で病院に運ばれ、13日後に息をひきとる。その悲劇は警察による人種差別をあからさまにし、街中その緊張感に包まれた。バスキアは「この事件は自分におきていたかもしれない」と語り、白人中心のアート界における黒人芸術家としてのバスキアの心に格闘を生み出した。
 ギャラリーは大きく2部屋に分かれ、手前はバスキアによる、黒人のアイデンティティーや警察による残虐行為に対する抗議を探求した作品が並び、奥の部屋には、マイケル・スチュワート事件を題材にした作品や新聞記事や手帳が並ぶ。
 その二つのスペースの間の壁には1985年当時の引っ越す前のキース・へリングのアトリエの壁が再現されていた。何かが故意的に切り取られた様子が分かる。ヘリングはその切り取った壁の絵を豪華な金の額縁に入れ、90年に死ぬまで自分のベッドルームに飾っていた。この切り取られたものは、バスキアがヘリングのアトリエを訪れた際に描いた絵だった。ヘリングの死後、身内が大切に保管してきたこの絵は、本展の手前の部屋、この「壁」の斜め手前に展示されており、切り取られた絵と壁のスプレーペイントがつながっていることから、壁から切り取られた絵であることが証明されたという。11月6日(日)まで。(城林希里香、写真も) (写真はキース・ヘリング)
*入館情報
 午前10時から午後5時30分まで(夏期は火曜9時まで、木曜8時まで)
 入館料は大人25ドル、シニア・学生18ドル。12歳未満は無料。土曜7時からは任意寄付制。
 詳細はウェブサイトwww.guggenheim.orgを参照。