編集後記 8月14 日号

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(民主党、63)が10日辞意を表明した。2週間以内に正式に辞任するものと見られ、後任には副知事のキャシー・フォークル氏(62、女性)が今月24日に就任する予定だ。辞意表明は、性的嫌がらせ(セクハラ)で辞任圧力が強まっていた中での苦渋の判断となった。同知事はセクハラの事実はないと今も否定しているが、州政府の業務停滞を避ける意味で引責辞任の意向を表明したものだ。ジェームズ司法長官が今月3日、特別検察官に指示した独立調査でクオモ氏が州職員など女性11人にセクハラをしていたとする報告書を発表、セクハラに関する連邦法と州法に違反したと断定したことで一気に信頼が失墜、州政府内でも孤立状態に陥った。知事側は11人の女性からの告発は恣意的なものであるとして反論していたさなかでの辞任表明だったことから驚きを持って周囲に受け入れられたようだ。NY州民主党委員会のジェイ・ジェイコブス委員長やチャック・シューマー連邦上院院内総務(民主党、NY州選出)、さらにバイデン大統領やペロシ連邦下院議長、デブラシオNY市長も知事は辞任すべきと発言し、四面楚歌、孤立無援の中で、事実を認めないまでも、一旦退くことが政治停滞を免れる、政治停滞の原因になることを避けるという判断だった。これでクオモ知事を過去の人と葬るのはまだ早い。気になるのは、ニューヨークタイムズが一貫して、今回のセクハラ疑惑と司法長官の公表に対してある種の懐疑的な見方をしている点に注目したい。クオモ知事は来年の知事選出馬の意向を明らかにはしていないが、後任知事のホークル氏や今回、クオモ氏を知事の座から追いやったジェームズ司法長官本人の出馬も取り沙汰されている。同紙は政治的な背後の存在を注視している。現代社会においてセクハラの告発に対抗しうる雄弁は、むしろ自らを陥穽(かんせい=落とし穴)に引きずり込むだけで、トランプ元大統領くらいの厚顔でない限り白旗を振るしかない。しかし現実は小説よりも奇なり、辞任までの2週間にどんなお化けが出てくるのか見守りたい。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)