国籍法違憲訴訟は1勝1敗

 東京高等裁判所は2月21日国籍法11条1項を合憲とする判決を下しました。しかし、一審で門前払いされた原告2名に門戸が開かれた点は画期的な勝利で1勝1敗といえます。

 これは、スイス在住の野川等さん他が外国籍を取得しても日本国籍を自動的に失わずに「保持するかどうか当人が選択できる」よう改正を求める訴訟です。判決は、憲法22条2項は国籍離脱の自由は定めるが、離脱しない自由を積極的に保障してはいないと述べ、複数国籍を防止、解消する規定の目的は合理的だとして、一審に続いて合憲としました。

 他方、一審では、まだ外国籍を取得していないことを理由に原告としては不適格とされた2名を「門前払いはできない、原告として適格である」とした点で前進でした。これは居住国の国籍を取得する要件を満たす人であれば訴訟を起こせるとするものです。訴訟の門戸が各国の多くの日本人に開かれます。

 判決後の報告会には、里帰りしていた日本で、このまま出国すると日本に帰国できなくなる制度に承服できず、国籍法第11条違憲訴訟を進めている米国在住の近藤ユリ弁護士や、「英国在住の孫が日本国民としての権利保障がされない、母国から排除される法律だ」と指摘した山浦善樹元最高裁判事他も参加しました。

 こうした「当事者」が激増しています。海外の日本人「永住者」が過去最高の約55万人であるのに加え、コロナ禍で、日本国籍を奪われた日本人は「外国人」として帰国するためビザ取得が遅れて親の死に目に会えなかったなどの実害が増大しているからです。結婚や就職などのために居住する国の国籍が必要な日本人の権利や社会保障、アイデンティティを強制的に奪ってしまう国籍法を放置することはできません。

 原告側は最高裁に上告する意向です。高裁が外国籍取得によって日本国籍を失うという物事の重要性を認めたことや、合憲とすることの理論的整合性の難しさがさらに浮き彫りになったことが、最高裁へのとっかかりになります。

 しかし、これだけ海外日本人の「実害」が増大している今、裁判と並行して、海外日本人の権利や社会保障、アイデンティティを守るための法改正や、支援策を国会や行政府が検討すべき時です。国際結婚をした人々や移住した日本人にとっての複数国籍問題と捉えた国内の日本人も少なくないと思いますが、今やこの問題は他人事ではない問題となっています。内外の日本人の連携による支援を進めていきたいと思います。

3月13日 と18日に国籍はく奪条項違憲訴訟福岡の報告集会が開催されます。ご希望の方は以下からお申込み下さい。http://yumejitsu.net/

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。

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