少年たちは未来を夢みた

堀江あき子・編
河出書房新社・刊

 これは、昭和20年から40年代までの日本の少年たちが想像した未来予想図を集めた大図鑑だ。当時の少年たちが食い入るように雑誌にのめり込んでいった魅力が満載だ。なんと言っても当時の少年たちには、21世紀が、科学万能の未来世界の憧れだったのだ。戦後の復興期から、高度経済成長期にかけて、たくさんの少年少女雑誌が発行された。その中で、子供達を魅了したのが、21世紀を予見したような未来予想図や、空想科学特集だった。誰もが自由に宇宙に行ける未来、自由に空を飛ぶ乗り物や流線型の高速自動車が走り、超高層ビルが建ち並ぶ未来都市、何でも言うことをきいてくれるロボット、宇宙からの侵略者や怪獣と科学兵器を駆使して戦うスーパーヒーローたち。それらは、いつか実現されるという、願いを込めて、子供達は科学の発達に思いを馳せ、空想の産物を夢見た。

 当時の優れた画家や漫画家たちは、こうした未来の姿を雑誌の表紙絵や口絵、挿絵、絵物語、マンガなどさまざまな形で表現していった。彼らが想像力を駆使して時にリアルに、そして巧みにメカニカルに描き出した空想科学の世界は、子供達に未来への夢と希望を与えた。

 この本には、そんな世界を見事に描いた、小松崎茂、伊藤展安、高荷義之、梶田達二、中島章作、石原豪人といった、昭和が生んだ大天才画家、絵師たちによる傑作集でもある。

 目次を見るだけで楽しいい。未来人の生活、未来都市、未来の自動車、飛行機、船、ロボット・エイジ、宇宙へ羽ばたけ僕らの未来、怪獣ブームなど。少年雑誌が百花繚乱のごとく書店にならんだ時代でもあった。『少年』『少年ブック』『少年画報』『漫画王』『冒険王』そして『少年マガジン』『少年サンデー』『少年キング』『ボーイズライフ』など現代に続く少年雑誌黄金時代の歴史をじっくりと楽しむことができる。

 この少年雑誌の表紙を飾った画家たちの作品は、当時の男の子たちの大切なホビーの一つだったプラモデルのボックスアートなどにも見ることができる。巻末にサンサーバード人気にも触れている。しかし昭和も40年代の終盤、西暦で言うと70年代に入ったあたりから、公害など科学の負の面がクローズアップされるようになり、夢見た科学万能の効き目が精彩を欠き始める時代となっていく。当時の子供が夢見た未来の21世紀は、気がつけばすでに20年もたってしまっている。無人自動車、空を飛ぶドローンが現実になっても、新型肺炎コロナウイルスに苛まれるこれが未来の現実だとは誰が思ったことか。

 マンハッタンや、北京、上海、ドバイには天にそびえる超高層ビルが乱立。空想した幾つかは現実になっているが、明るい未来がやって来たかは多いに疑問。地震災害にエイズ、戦争に紛争に経済格差。昔、少年だった未来の現代に生きるおじさんたちに捧げる癒しの一冊。辛い時に、こんな本をペラペラめくるだけで未来を信じた少年時代にしばし浸れる中高年のセラピー本としても効果あり。もちろん、少年雑誌に憧れたかつての少女いま読んでも心和む一冊だ。(三浦)