日系社会の駆け込み寺、JASSIの高齢者支援

 ニューヨークの日系社会で生活が行き詰まったり、経済的な困窮者となって日本に帰国することもアメリカで安定した老後を送ることも難しい高齢者たちがいる。日系社会の表には出てくることのない群像だ。その数は、約400人とも600人ともいわれる。多くが永住者で、チップや現金収入で生計をたててきた料理人やミュージシャン、アーティストなどの自由業者が多い。

 永住者でも現地採用の会社員として日米の企業に勤め、ソーシャルセキュリティー(米国社会保障年金)や401(K)を会社からの自動天引きで長年積み立ててきた人たちは年金があるため無収入の憂き目には遭っていない。キャッシュビジネスの場合は社会保障年金の十分な積み立てが確保できていないケースが多い。解雇に伴う一時的な失業保険はあるが、それで一生は食べてはいけない。

 日米ソーシャルサービス(JASSI)は、ニューヨークで言語や文化の違いから支援を必要としている人々へ無料で福祉サービスを提供している非営利団体で、生活に困り果てた最後のセーフティーネット、「駆け込み寺」として活動し、今年で40周年を迎える。

 JASSIの最も重要な「ホットライン・プログラム」(電話212・442・1541)では、生活面で問題を抱え困っている人を支援している。昨年度は、多くの人々からNY州医療保険への加入などを含めたヘルスケア、コロナウイルス、公的支援、メンタルヘルスに関する問い合わせを受けた。2020年7月1日から2021年6月30日までのコンタクト数は過去最高で延べ6925件で、平均で一週間に133件。クライアント数は1270人で、そのうちシニアのクライアントは432人。各クライアントが直面している問題が複雑で多岐に及ぶため、コンタクト数が多くなっている。

 JASSI理事長の望月良子さんによると「シニア・プログラム」(60歳以上対象)では、独り暮らしの高齢者を対象とした定期的な「見守り電話」に加え、コロナ禍のため週に1度のオンライン茶話会を開催し、電話やオンラインにてご自宅から安心して参加してもらえる形式に変え、好評をえているそうだ。また「ケアギバー・サポート・プログラム」では60歳以上の高齢者の介護者への支援を継続して行なっている。「コミュニティー・アウトリーチ・プログラム」では、公衆教育を目的とし、必要な情報を収集、更新してEニュースレター、フェイスブック、ツイッターにて発行。

 ジャシースタッフは、現地の教育や訓練を受けており、守秘義務遵守のもと、地域の福祉団体と連携してサービスを提供している。望月さんは「これらのプログラムを継続できましたのも、皆様からのご賛同とご支援を賜りましたおかげです」と感謝の言葉を口にする。実際に手を差し伸べたケースを次のページで紹介する。

(老後生活困窮の現実に続く)