O・ヘンリー短編の世界へ

 ワシントン広場に近いウエストビレッジ。病に伏し、自暴自棄になった画家の妻が、窓の外の壁を這う蔦の葉が全部落ちたら自分は死ぬと嘆く。酒浸りでいつかは名画を描いてみせると豪語していた階下の友人老画家がそれを聞きつけ「ばかばかしい」と言いながも内緒で壁に一枚の葉を描く。暴風雨で木が裸になった後も壁に残る一枚の葉を見て妻は生きる力を見出す。しかし雨風に当たって葉を描いた画家は数日後に肺炎で亡くなる。一枚の名画を残して。

 O・ヘンリーの短編小説『最後の一葉』だ。窓ガラスに映る枯葉を見て、ふとそんな光景が目に浮かんだ。

(写真・植山慎太郎)