64年東京五輪で通訳

ニューヨークで不動産業30年

奥山 愛子さん(78)

東京五輪の選手村で通訳仲間たちと(右から2人目が奥山さん/写真・本人提供)

 今年開催になる2020東京オリンピックをニューヨークから感慨深げに見守っている日本人女性がいる。クイーンズのフォレストヒルズで不動産業を30年以上営み、現在は投資アドバイザーをしている奥山愛子さん(78)だ。
 奥山さんは、1964年東京オリンピックの代々木選手村で通訳として勤務した。山形県寒河江市仲町の駅前にある旅館の娘として生まれた奥山さんは、小さい時から外国人と接する機会があり、外国に憧れを持って育ったという。
 共立女子短期大学英文科を卒業後、昼はサンタ・マリア学院の講師を、夜は交通公社(現JTB)のガイド、英会話学校の受付をやるなどして英語をマスターした。
 オリンピックの通訳の募集を知って、自分の語学力を試すためとさらに勉強するために応募して、五輪通訳の採用試験にパス。
「英語だけしかできないと、何か持って来てくれと言われても、部屋の番号も分からない場合が多く、せめて数を言えるくらいには数か国語を理解していなくては」と研究熱心だった奥山さん。
 2年後の66年、訪日旅行で世話した米国人女性社長の招きでカリフォルニア州サンディエゴに。
 グレイハウンドで10日かけて大晦日に着いたニューヨーク。お正月にはさっそく、日本クラブの新年会でコートチェック、ハットチェックの仕事をしていた。


 ハンターカレッジで学士(BA)卒、ニューヨーク大で不動産ライセンス資格を取って82年にクイーンズ区のフォレストヒルズに「奥山不動産」を開業。マンハッタン、ウエストチェスターなど3か所に事務所を広げ、2012年に閉業するまで30年以上日本人の住宅探しを世話した。
「世界中で日本人の女性はお利口でインテリだと思われるように自分の時間をもっと使って勉強してビジネスリーダーになってほしい。国連の緒方貞子さん(故人)が『日本はもっと大きな規模のことをしなくてはならない』っておっしゃっていたけど、本当にその通り。そうでないとフォロワーが出て来ない。頑張って」と若い女性たちにエールを贈る。(三浦良一記者、写真も)