危ない可動ステップ

14丁目の地下鉄駅
安全性に投資できず

 地下鉄ユニオンスクエア駅の4番、5番、6番線プラットホームの「動くプラットホーム」の安全性が当駅利用者やマスコミから懸念されてきた。駅はきついカーブ上にあり、直線の車体とプラットフォームのカーブに避けられないギャップが生じるため、それを埋める可動ステップ(Gap Filler)が設けられている。しかし、幅の狭いプラットフォームには両側から車体が出入りし、ラッシュ時には人があふれるような混雑となり、「可動ステップに乗るな」の可動ステップに書かれた黄色の警告さえ見えなくなる。
 実際にこの可動ステップの事故が何件か起きている。過去45年間、人身傷害訴訟を扱ってきたダンクナー/ミルスタインPC弁護士事務所のジェイ・W・ダンクナー弁護士は、これまでに扱ってきた地下鉄事故のうち可動ステップが関与しているものが5〜6件あり、最も大きく報道された一例は、陪審員がMTA(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー)に被害者へ1000万ドルの支払いを命じたマイケル・ディオンケースであると本紙に語った。
 事件は、2010年12月、ディオン氏(当時41歳)は地下鉄ユニオンスクエア駅の4番線プラットホームと電車の13インチ(33センチ)の隙間に落ちた後、13インチの隙間を埋めるためにとる付けられた自動可動ステップが、「167回出たり入ったりして」ディオン氏を締め付け、同氏は大怪我をしたというもの。
 当駅の安全用柵なしの「動くプラットホーム」に対する通勤者やマスコミからの安全性を懸念する声はこれまでにも報道されてきた。今年4月には、同駅のプラットフォームで21歳の女性が下り6番電車に巻き込まれて即死した。目撃者によると、被害者のマクドナルド=ファロンさんは線路のぎりぎりに立っていて足を滑らせ、入ってきた電車とプラットフォームの間で引きずられて即死したとされたが、被害者が自動可動ステップ立っていてバランスを失ったかの云々は一切報道されていなく、MTAの広報部からも返答がない。
 今日、度重なる事故の後でも当駅の安全対策は警告のアナウンスメントと可動ステップにペンキで塗られた警告と、まばらな駅員の立ち合いという3点のみしかない。何故か? ダンクナー弁護士は、MTAの金銭面からの躊躇だと指摘する。MTAはここに安全柵を設けることを「高すぎる」として躊躇してきた。
 日本では可動ステップが可動式ホーム柵とセットで使われている=写真左=。「安全のため、両者は連動しており、可動ステップがせり出し終わってからホーム柵と列車のドアが開きます。そして、ホーム柵と列車のドアが完全に閉まってから可動ステップが格納されます」と、設計と製造元の京三製作所の広報部員が可動ステップと可動式ホーム柵を併用することの安全性を説明する。その通りだとダンクナー弁護士も同意する。「私はもちろん安全柵を併用するよう裁判で推薦しました。しかし問題は経費です」と、ダンクナー弁護士は説明する。安全柵の使用はMTAでも検討もされたとのことだが、経費が高すぎるとしてニューヨークでは採用されていない。(ワインスタイン今井絹江)