NY市が「対応に限界」

テキサス州とフロリダ州が不法移民をバスで送り込む

4月以降2万人以上が到着

 移民受け入れに寛容なバイデン政権を批判する狙いで、テキサス州やフロリダ州などが今年4月から不法移民をバスでニューヨーク市に送り込んでいる。その数が10月18日で2万人を超えた。アダムス市長は「ニューヨーク市は移民のサンクチュアリー(聖域)」として受け入れてきたが、予想外の数の多さに対応仕切れておらず、市議や活動家らによる抗議デモが起きる始末。メディアのインタビューで「(移民危機が)私たちの経済を弱体化させている」と語るなどいらだちを隠せないようだ。

 市によれば、春以降に到着した移民のうち約1万3000人がホームレスや被災者などを収容するシェルター(避難所)にいる。避難所の滞在者は9月だけで6500人増加、総数6万人ほどとなっており、パンク寸前だ。

 市は避難所を増やしてきたが追いつかないため、9月末にブロンクスのオーチャードビーチの駐車場に1000人収容の大型テントの避難所を設置。しかし雨で浸水してしまう。10月3日に急きょイーストリバーにあるランドール島に移動すると発表したが、市議や州議会議員、移民・ホームレス支援団体の活動家ら数十人は13日、テント避難所に反対する抗議行動を市庁舎前で行った。ジャバリ・ブリスポート州上院議員(ブリックリン25区選出)は、「テント都市はあり得ない。ホテルを使うべきだ」と述べている。テントではハリケーンなどに対応できないし、家族では入れないためだ。

 大型テントの避難所は18日にランドール島に設営された。約1000床のベッドが並び、3度の食事も無料だが、大人単身者向けで4日間ほどの短期滞在を想定したもの。家族は入れない。このため、市は45ほどのホテルに避難所を開設した。最大級のスチュワートホテル(7番街31丁目)は300世帯ほどを収容できるという。廃業したホテルも利用する計画だ。

 NY市では泊まるところのない人には「避難所利用の権利」が法で保障されているため、避難所を確保する義務がある。アダムス市長は、「送り先がワシントンDC、シカゴ、ニューヨークをターゲットにしているのはなぜなのか。3市とも黒人市長だからか、それとも北部の都市に向けられているだけなのか」と語り、アボット・テキサス州知事らの黒人差別を示唆する発言も。移民政策は8日に行われる中間選挙でも争点の一つとなっている。