「全米図書賞」 翻訳文学部門 多和田さん受賞 

『献灯使』『The Emissary』

 米国出版界で最も権威があるとされる全米図書賞(ナショナル・ブック・アワード)が14日に発表され、翻訳作品部門賞に多和田葉子さん(58)の『献灯使』が選ばれた。
 多和田さんは『犬婿入り』で1993年に芥川賞受賞。ドイツ在住で、著作は世界各国で翻訳されている。『献灯使』は、大災厄後、核で汚染され「鎖国」した近未来の日本を描いたディストピア小説。2014年に講談社から刊行、英語版はマーガレット満谷(みつたに)さん訳で今年刊行された。
 翻訳文学部門はフィクションのみで、1983年まで設置されていたが中断。今年度ノンフィクションも含めて復活した。世界中の作品から10作品がノミネートされ、『献灯使』が選ばれた。日本語で書かれた本の翻訳がこの賞を受賞するのは1982年の、ともにリービ英雄が英訳した樋口一葉の『たけくらべ』(The Ten Thousand Leaves)と『万葉集』(The Ten Thousand Leaves)以来、36年ぶりの快挙となった。授賞式では多和田さんの「翻訳は本に翼を与えて国境を越えさせる」というメッセージが代読された。
 全米図書賞のフィクション部門はシークリット・ヌーネス(67)の『The Friend』(日本語未訳)が受賞した。自殺した幼馴染が飼っていた犬を引き取り、悲しみを分かち合う女性を描いた作品。ノンフィクション部門ではジェフリー・スチュワート(68)の『The New Negro: The Life of Alain Locke』(日本語未訳)が受賞した。ハーレムのルネッサンスを牽引したアラン・ロックの伝記。