平和伝える使者来米、よこはま子どもピースメッセンジャー

国連本部訪問を報告

「戦争のない世界は対話こそ」実感

 横浜市(山中竹春市長)が実施する「よこはま子どもピースメッセンジャー」の本年度の参加者が、体験の成果を20日、ニューヨークの横浜市米州事務所(関谷聡所長)で行われた記者会見で語った。この事業は、「国際平和のために、自分がやりたいこと」をテーマに日本で行ったスピーチコンテストで、約5万人の応募の中から選ばれた横浜の小学6年生2人、中学3年生2人の計4人をニューヨークに派遣し、国際連合本部、ユニセフ本部、UNDESA国連社会開発部門、ユネスコ事務所、国連日本代表部などを訪問、横浜市の児童生徒の代表として国際平和について学び、平和に対する思いを直接伝える機会を与えるもの。同市では平成8年(1996年)から同ミッションを続け、今年で27回目となる。横浜の子どもたちは、関係機関代表者との会談を経験、国連国際学校でも授業を体験した。4人にとっては、ロシアとウクライナの戦争の長期化、イスラエルとハマスによる中東情勢が穏やかでない今だからこそ、平和についての理解を深め、自分のできることを考える機会となったとそれぞれが体験を語った。

 会見したのは、横浜市内戸塚区品濃小学校6年生の吉田愛さん、盲特別支援学校6年生の島田優心さん、磯子区森中学校3年生の大野瑞葉さん、港北区日吉台西中学校3年生の佐々木春樺さん。

 大野さんは、7歳の時から空手を始め、現在は黒帯の有段者。男子が多いため無意識の差別感を感じたことでジェンダー問題に意識を持ったという。今回UNウーマンの代表と国連で面会し、男女平等やLGBTQが世界でどう進んでいくのかについて聞くことができ、その中で、「お互いを知ること、理解することが大事だという価値観を得ることができた。将来について何かになりたいというものはまだないが、いま世界は真っ暗闇だが、社会人になった時にもし平和になっていればそれを継続、維持する活動や仕事に就きたい」と話した。

 佐々木さんは、日本でユニセフの募金などに協力したが、どこか遠い存在で実感が湧かなかったのが今回ユニセフを訪問して「ここがそうです」と言われた瞬間にその言葉が胸に響き身近な存在に感じたという。「自分は作品を作るのが好きなのでアーティストになりたい。国連の人のように世界を動かすことはできないかもしれないが、自分は1人の心を動かすような人になりたい」と話した。

 吉田さんは「小さい時に家族で中国に住んでいたことがあり、日中の人がお互いによく相手の国のことを知らないのに互いにいい印象を持っていないことが悲しく思え、知ることで自分を変えようというテーマでスピーチをした。今回国連で、話すこと、コミュニケーションをすることが大切だと一人一人のことを見て話してくれたことが心に刺さった。知ることが何より大切だと思った。将来は国連で働くこともとても気になっている」と話した。

 島田さんは「家族が大好きです。今回家族と一週間離れてとても寂しいけれど、戦争で家族と会えなくなった人たちがいることが悲しくて平和についてのスピーチをしました。自分は生まれつき目が見えにくいです。戦争によって、目が見えていた人が目が見えにくくなってしまうのは悲しいですし、ぼくと同じような子どもたちが体が不自由になってしまうのは嫌だと国連の偉い人に伝えました。国連の人から一緒に働きませんかと言われて、働いてみたいと思いました」と話した。児童生徒を引率した横浜市教育委員会事務局の小中学校企画課主任指導主事の兵頭律子さんは「記者の皆さんからの質問に答えることで自分の考えをまとめることができたし、一週間で自分がやったことを価値付けられたのではないか」と話した。

(写真)左から佐々木さん、大野さん、島田さん、吉田さん(20日、横浜米州事務所で)