日本の静かなるリーダーシップ

出版記念講演会

「インド太平洋の地政学上重要なプレーヤーに変貌」

■スピーカー
ブルッキングス研究所東アジア政策研究センター長
ミレヤ・ソリス氏

■モデレーター
コロンビア大学名誉教授
ジェラルド・カーティス氏

 コロンビア大学と国際交流基金ニューヨーク日本文化センター、中国世界研究項目は9月27日、ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス博士=写真中央=を講師に招き、新著『Japan’s Quiet Leadership』(ブルッキングス・インスティチュート・プレス刊)についての講演と質疑応答を行った。モデレーターにコロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授=写真右=が解説した。

 本書は、日本の経済的・政治的進化の過去30年間を俯瞰し、グローバリゼーションの経験、経済的国家運営の影響と再調整、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的挑戦の数々を紹介する。そうすることで、変化し、不完全で、より結果的な日本の物語を伝えることを目的としている。

 カーティス名誉教授は、「重要なメッセージは、日本がインド太平洋地域の再構築と自由主義的国際秩序の擁護において重要な指導的役割を果たしているということだ」と話す。

ネットワーク大国日本

ミレヤ・ソレス・著
ブルッキングス研究所出版・刊

 コロンビア大学と国際交流基金ニューヨーク日本文化センターは9月27日、ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス博士を招き、新著『Japan’s Quiet Leadership』についての講演と質疑応答を行った(1面に記事)。

 モデレーターにコロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授が解説した。本書は、日本の経済的・政治的進化の過去30年間を俯瞰し、グローバリゼーションの経験、経済的国家運営の影響と再調整、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的挑戦の数々を紹介する。そうすることで、変化し、不完全で、より結果的な日本の物語を伝えることを目的としている。カーティス名誉教授は、「重要なメッセージは、日本がインド太平洋地域の再構築と自由主義的国際秩序の擁護において重要な指導的役割を果たしているということです」と話す。

 本書は、9月1日に発売され、インド太平洋の地政学における重要なプレーヤーへと変貌を遂げた日本について掘り下げ、民主主義の回復力、社会の安定性、積極的な外交といった日本の強みを強調する一方、過疎化、不平等の拡大、地域平和の脅威といった差し迫った問題にも取り組んでいる。

 なぜ日本は「失われた数十年」からポピュリズムの波から無傷で抜け出し、インド太平洋の地政学においてはるかに重要なアクターとなったのか。この問いに答えるため、『日本の静かなるリーダーシップ』は、日本の国内経済と政治の進化、経済的な国家戦略、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的な課題の数々について、包括的な考察を提供している。過去30年にわたる日本の軌跡を深く掘り下げる本書は、民主主義の回復力、社会の安定性、積極的な外交といった日本の隠れた強みを強調する一方で、過疎化、格差の拡大、有権者の離反、アジアの長い平和への脅威といった、日本が直面する深刻な課題についても考察している。本書は、日本の政治と外部環境を貫く深刻な変化の潮流をたどり、日本の経験が、低成長、人口動態の悪化、経済のグローバル化への適応、強力で自己主張の強い中国の出現に対処している国々にとって、より適切なものとなっている無数の方法を明らかにする。これは、相対的な能力の低下という厳しい現実を克服するために、日本がネットワーク大国として再出発した物語である。インド太平洋を再構築するにあたり、東京は貿易統合とインフラ資金調達という強固な経済戦略を展開し、地域および域外の主体との新たなパートナーシップを培い、米国との同盟関係を深めるという積極的な安全保障外交を展開した。とはいえ、地政学的な軋轢、日本のパンデミック的な偏狭さ、国際経済関係の安全保障化によって、日本の「連結性」という国家戦略が試されている。グリーン、デジタル、人的資本の変革を実現し、国家の舵取りにおける優柔不断な政治の復活を避け、民主主義のダイナミズムを育むことを紹介し、本書は、日本の政治、経済、そして国民が、安倍時代を経て2020年代、そしてその先へと向かう先を照らし出す。(三浦)