海外有権者の声届く

林外務大臣署名受けとり「改善したい」

在外ネット投票

 海外在住邦人の在外投票は不便すぎるとしてネット投票の導入を求めるオンライン署名運動が行われ1月31日、集まった署名2万6027人筆が林芳正外務大臣に手渡し(手交)された。(写真=海外在留邦人2万6027人の署名が入ったUSBメモリースティックを受けとる林外務大臣(右端)写真提供・change.org Japan)

 署名運動は昨年10月の衆院選がきっかけで、ツイッターなどで知り合ったニューヨーク在住の子田雅子さん、イタリア在住の田上明日香さん、ドイツ在住のショイマン由美子さんの3人で開始。署名サイトChange.orgを使い同年11月4日よりオンライン署名「在外ネット投票の早期先行導入を求めます!」を開始、3か月あまりで2万6000筆が集まった。

 林外務大臣への手交では、欧米にいる発起人3人とネットで繋ぎ、署名が入ったUSBメモリーをChange.org Japanのスタッフが代理で手渡した。会合には小林史明デジタル副大臣も参加した。ショイマンさんは、海外有権者およそ100万人のうち選挙人証を持っている人は約10万人で、投票は昨年10月の衆院選で2万人ほどとなっているのが現状であり2%ほどでしかない。在外公館が遠い人が投票を断念するケースや郵便投票の問題点などを指摘した。「小さなUSBメモリーですが、その中には早くネット投票を実現したいという声がたくさん詰まっています」と語った。請願書では2022年夏の参院選で在外邦人を対象にネット投票の実証実験をし、2025年の参院選には在外ネット投票の確実な全体運用を求めている。

 林大臣は「在外選挙は平成10年に創設されてこれまで15回行われてきた。時代が変化しており見直しが必要。所管は総務省だが皆様のご要望を踏まえて改善していきたい。デジタル庁でいろんな観点で検討してもらっている。2万人投票の現状を一桁増やしたい」と応えた。

ネット投票早期実現を
公館投票、郵便投票の限界訴え

 林大臣からは「在外選挙は平成10年に創設されてこれまで15回行われてきた。時代が変化しており見直しが必要。所管は総務省ですが皆様のご要望を踏まえて改善していきたい。デジタル庁の小林副大臣もおられますが、ネット投票の実証実験も行っている。マイナンバーカード、二重投票、投票の秘密保持、セキュリティー対策など、いろんな観点で検討してもらっている」と応えた。

 大臣は在外投票の大変さを聞きたいということで、田上さんは昨年の衆院選で郵便投票をしようとしたがコロナ禍で郵便事情が悪く間に合わないことがわかり、在外公館投票にしたが往復8時間、一泊して費用2万6千円かかったことを紹介、「このアナログな制度では経済的にも体力的にも物理的にもこの先も続けていくのは大変厳しい、ネット投票を強く切望します」と話した。子田さんは「ニューヨークでも総領事館まで出かけるのが大変で投票を躊躇する声があり、自宅でできるネット投票をぜひ実現させて欲しい」と語った。

 林大臣からの「遠くて大変だということ以外ではなにかありますか」との質問に田上さんは、投票の期間がとても短いという問題をあげた。平日の1日しか投票ができなかった在外公館、またコロナ禍で飛行機が飛ばないので票を日本に持っていけないため在外公館投票自体が行われなかった在外公館が15カ所あったことなどを指摘した。在外公館からコロナ禍で郵便投票を推奨しますと言われて9月から準備したが、むしろコロナ禍で郵便事情が悪く間に合わないため在外公館投票した経験を語った。

 ショイマンさんは、エクスプレスで送っても郵便投票が間に合わない事例もあったことを紹介、「お金をかけたのに投票できなかったという無念があります」と語った。小林デジタル副大臣からは、2024年の法改正で海外邦人のマイナンバーカード利用が可能になる可能性が高く、個人認証が簡単にできるようになればネット投票の環境が整うことが語られた。

 林大臣は「これだけ大変ななか投票してくださった2万人には心よりお礼を申し上げたい。残る課題は投票の秘密保持などがあるようだ。制度を作るのは総務省、デジタル庁だが、100万人のうち2万人投票という現状を一桁変わるようにしっかり後押ししたい」などと応じた。

発起人3人がオンライン記者会見

「当事者が声をあげることが大事」

 林芳正外務大臣への署名手交後、発起人3人による記者会見が行われた。

 この署名運動を始めたきっかけについて田上さんは、林大臣との会合の際にも話したが、昨年の10月の衆院選で在外公館投票で、往復8時間、一泊して費用2万6千円かかったことをあげ、「ネット投票を強く切望します」と語った。ショイマンさんも在外投票に往復10時間かかり、そのハードルの高さを痛感したことがきかっけと語った。また、ネット投票は総務省が国内で実証実験するところまで来ているが、本当に実現させるためには「当事者が声をあげることが大事で、社会を変えていくのは市民」と語った。

 子田さんはこの署名運動は「海外有権者100万人が憲法第15条で保障された選挙権を行使できる世界」を目指すもので、在外選挙は超党派的課題であり与野党双方との会話を進めていきたいと語った。ニューヨーク市内に住む子田さんは「私自身は総領事館まで電車で数分のところに住んでおり在外投票で苦労したことはないのですが、周りにはいっぱい苦労されている人がいます。衆院選で在外投票に関する総領事館からのメールに『皆様の大切な一票です。必ず投票に行きましょう』という一節があったのですが、その文章がとても残酷だということを知って欲しいと思いました。行きたくても行けないような人がいなくなるネット投票に期待しています」と語った。

 記者会見では在外投票自体だけでなく在外選挙人証にも取得の煩雑さなど課題があることが取り上げられた。今回林外務大臣へ署名を提出した経緯については「デジタル副大臣と面談する機会があり、副大臣から外務大臣の方に話をしてもらった。外務大臣に在外邦人の声をいったん受け止めてもらい外務大臣から総務大臣にプッシュしていただく形になった」と田上さんは語った。署名は外務大臣と共に総務大臣、デジタル庁大臣宛てとなっており、未定だがそちらへの提出も考えているという。署名は現在も受け付けている。

時代の流れにあと一歩

 30年近く前に私たちがやった在外投票制度の実現を目指す署名運動では1万1000人筆の署名を集めるのに1年半かかりました。今回の在外ネット投票の署名運動ではたった3か月で2万6000人を超える署名が集まったと。時代の変化を感じます。

 今回の署名提出は在外ネット投票実現への第一歩だと思います。勝負はここからです。同制度の実現、つまり法制化のためには今回の署名運動だけでなく、多くの日本人有権者の具体的な行動が必要です。在外ネット投票実現に賛同される方にはぜひ、ご自身の選挙区の衆議院議員及び参議院議員に直接SNSやメール、電話などで同制度の実現を訴えていただきたいです。(海外有権者ネットワークNY共同代表・竹永浩之さん)

                  

 在外ネット投票署名の林芳正外務大臣への提出は歴史的快挙です。在外邦人から投票の権利を奪ってきた選挙制度を変えることは日本の民主主義の前進です。私も在外投票推進議連の会長として活動しましたが、法律の壁の厚さと、海外から日本を変える難しさを実感していましたが、3人の女性の決起により、3か月で局面を変えてくれました。3人の共通点は、外からだから見える日本の問題であり、時間とコストをかけなければ民主主義が守れないという体験です。コロナ「禍」は遠くの人々の問題を共有し、繋がるネットという手段を提供してくれました。この「福」を活かして、日本をchange する闘いを進めましょう!皆さん有難うございました。(元在外投票推進議連会長・ 藤田幸久さん)