新年賀詞名刺交換会NYで

年頭の所感、米国から

 ニューヨーク日本総領事館主催、ニューヨーク日本商工会議所、ニューヨーク日系人会、日本クラブの日系3団体共催によるバーチャル令和四年新年名刺交換会が13日正午から1時まで対面とZOOMで開催された。各団体代表による年頭の挨拶と鏡開き、ジェトロと日本政府観光局のNY代表のゲストスピーチ、バーチャルでの名刺交換が行われた。オンラインで101人が参加した。


主催者挨拶 山野内勘二大使

「共に明るい未来を」

 2022年、まず思うことは、「コロナとの戦いも3年目。この戦いは容易ならざるものとなるが、我々は打ち勝つのである。コロナは止めても、経済と社会は止めない」という意気込みで2022年を臨みたいと思う。ホークル知事、アダムス市長も「感染対策には万全を期すが、経済はしっかり回していく」と同趣旨を述べた。お二方の決意・リーダーシップを参考にしていきたい。2022年は、3つのことが150周年という重要な節目となる。一つは、岩倉具視使節団の派遣。日本の日米交流を振り返る良い機会だ。二つ目は、ニューヨーク総領事館の開設。気持ちを改めて、今後も仕事に臨みたいと思っている。三つ目は、野球の伝来。世界の中でも特に野球を愛するアメリカと日本。アメリカのベースボールが日本に伝来してから150年経ったことは、日米の友情を考える上で非常に重要な出来事だ。そして、国際情勢を見れば北朝鮮のミサイル、ウクライナ情勢、中国をめぐる様々な課題、激動の年だ。ビジネスの現場でも、競争が厳しい中では、大変な状況だからこそ新しいチャンスが生まれる。150歳になった総領事館、我々のミッションは「日本コミュニティを支え、守り、手伝いをする」に尽きる。我々は、皆様と共にあって、一緒に明るい未来を築く一助になればと思っている。最後に私事だが1日4日付で帰朝命令が出た。3年3か月にわたって、総領事大使として努められたのも皆様の支えがあったからこそ。この場を借りて、御礼を申し上げます。後任の支援もよろしくお願いします。(写真上)


NY日本商工会議所 高岡英則会頭

「米国社会と共に発展を」

 オミクロンの爆発的感染、ウクライナ情勢、インフレ、サプライチェーン問題と、騒々しい年明けになった。日本の入国制限もなかなか緩和されず、悲願の訪来もなかなか叶わない不自由な生活が続いている。しかしながら、私は楽観視している。コロナとの戦いも3年目を迎える。事前事後の対策で、我々もずいぶん学んできた。オミクロンの正体が徐々に明らかになってきた。マスクやディスタンス、そして何よりもワクチン、ブースター、テストにアイソレーション。知恵を総動員して、コロナとの共生社会に向かおうと思っている。

 経済の方も、インフレを背景に各国の金融政策が変更に向かい、サプライチェーンの問題もあって、なかなか厳しい状況になっている。一方、消費は堅調だ。コロナ禍からのリカバリー、コロナ禍によって加速された生活スタイルの変化により、旺盛な消費力、そして市場、ビジネスモデルの進化に大きな期待を寄せている。チャレンジングだが、ビジネスチャンスに満ち溢れた一年になると思っている。JCCIの活動を振り返ると、年始交換会。その後いくつかのセミナー。ワクチン接種が進んだ7月にはサマーウェルカムバックパーティーは久々のインパーソンでの開催で大変盛り上がり、最大の催し、アニュアルディナーもインパーソンで開催ですることができ、200人も参加した。総領事館とJTBの支援もあり、日本語対応のCOVID-19情報コールセンターを3か月間実施した。日本クラブでは、2020年に引き続き、医療機関にお弁当を届ける弁当プロジェクトを開催。現在も、1万5000個の弁当を届けており大変好評だ。世界情勢は日々変化しているが、変わらないものはアメリカの重要性と、日本の大切な信頼関係だ。日系企業が広く、かつ深く米国社会に根付き、米国社会と共に発展していけるよう努力を続けて行きたい。


NY日系人会 佐藤貢司会長

「日本の伝統文化を継続」

 明けましておめでとうございます。新年は、新しいスタートの始まりです。新しい市長エリック・アダムス氏を迎え入れたニューヨーク、そして2年目に突入するバイデン政権にとっても、新しいスタートです。2021年は、パンデミックが続いたため、皆さんにとってもまた、ニューヨーク日系人会にとっても非常に困難で挑戦的な年でした。しかし、敬老会、桜祭り、七夕まつりなど、バーチャルやハイブリット方式を取り入れながら、いくつかのイベントを再開することができました。今後もJAAは、日本のコミュニティを支援し、日本の伝統文化をあらゆる年齢や背景の人々と共有し、祝福するという伝統を継続したいと思います。新年も皆様のご多幸をお祈り申し上げます。(英語スピーチを翻訳)


日本クラブ 上野佐有会長

「日米友好の深化に貢献」

 2021年は、ワクチン接種が進捗したおかげで、経済活動の再開、力強い需要が見られた年だったと思う。一方でサプライチェーンの問題や、人手不足を背景にインフレが高まっている状況だ。だが、総じて見れば、着実に力強くポストコロナに向かって進み始めた年だったと思っている。気候変動については、バイデン政権によるパリ協定への復帰を皮切りに、気候変動サミット、COP26など、国際協調の舞台においての(アメリカの)存在感が一層高まった年だったと思う。また、インド太平洋地域においては、Quadを経済関係の要の一つとする中、基本的価値観や戦略的利益を共にする日米両国において、経済・パンデミック対策・気候変動・安全保障、幅広い分野において、一層の関係深化から、この地域が直面するさまざまな課題の解決に繋がると確信している。昨年を振り返ると、文化・教養・スポーツなど多彩な活動を通じて会員の親睦を図ると同時に、地域社会との有意義な交流の場として日米の親睦交流に尽してきた。

 昨年はワクチン接種の進捗に伴い、夏のサマーフェスティバル、秋のクラシック音楽の夕べ、冬のクリスマスパーティーをハイブリットとインパーソンを交えて開催することができた。医療関連ウェビナー、文化、芸術、ファミリーイベントなどバーチャルイベントにも多くの方に参加していただいた。新年早々から、オミクロン株が猛威を奮っており、今年も残念ながら、新型コロナと共存せざるを得ない年となった。それでも日本クラブは、創意工夫を凝らして、会員の皆様の多様なニーズに応えられるイベントを企画し、そしてそれらを通じて日米の友好の深化に貢献できればと思っている。


ジャパンデー・インク 上田淳会長

「ジャパンパレード実施」

 ジャパンデーは、日米市民の交流促進、ニューヨークへの感謝の表意、日系コミュニティーの連帯強化の3本の柱で2007年から毎年5月セントラルパークで開催し、2019年には13回目を迎えることができた。今年は初めての試みで5月14日にセントラルパークのイベントに代わり、初のジャパンパレードを計画している。ニューヨークで「ジャパン」と名がつく初めての記念パレードになる。ルートは、セントラルパークウエストの81丁目から61丁目へ南下するように行進する。参加団体には、日本の文化・伝統・文化・スポーツ・コスプレ・マーチングバンド・学校など、日本の多様な魅力、日米親善を、ニューヨーカーにアピールする内容だ。パレードに必要となる予算は、現段階見積額で113万3000ドル、そのうち85万5000ドルの収益見込みまで到達している。引き続き、宣伝広告、寄付のスポンサーシップを募集している。協力企業には、パレードのフロートのモニターで企業名を表示するなど、いろいろなパターンでアクノレッジさせていただきたいと考えている。税制優遇措置にも登録可能になっている。パレード参加団体の募集を開始している。山野内大使の「志があれば必ずや実現する」との言葉を信念として、記念すべき第一回のパレードが、誰もがこのパレードの名前を知っていて楽しみにしている、そんなイベントになるよう努めていきたい。


ジェトロNY事務所 河本健一所長

「米国の先行き占う5点」

 米国の2022年が幕を開けたが、依然先行き不透明なままだ。次の5点が今後大いに注目される。まずコロナ禍。経済社会活動に対する制限を必要最小限に抑え、コロナと共存しようとする動きが本格化しているのではないか。次に、ビルド・バック・レター・法案。バイデン大統領の肝いりのこの法案は、昨年12月民主党中道派マーチン上院議員の反対表明によって暗礁に乗り上げた。この法案が成立しなければ、バイデン政権にとって大きな失点となる。続いてインフレ。サプライチェーンの混乱による供給不足で物価が急上昇した。バイデン政権を批判する勢力は、このインフレをバイデンフレーションと揶揄している。今後サプライチェーンがいつ正常化するのか、またFRB連邦準備制度理事会がインフレの収束と雇用の最大化の両方をコントロールして達成できるのかがポイントになる。国際面では米中関係。それによって日系企業にも少なからず影響を受けると思われ、日本としてどのようなスタンスをとるのか問われる。そして中間選挙。バイデン大統領の支持率は、8月下旬以降、不支持率が支持率を上回る。日系企業は今後どのように組織を運営していくのか、働き方はどうするのか、さまざまな思いを巡らせる。ジェトロも例外ではない。職員に対し三つのワークを示した。情報を収集・伝達するネットワーク、必要なサービスを迅速的確に届けるフットワーク、仲間と協力連携して仕事を行うチームワークだ。日米経済の橋渡し役として今年も日系企業の米国での事業展開をサポートしたい。


日本政府観光局 山田道昭NY事務所長

「旅行のトレンドに変化」

 2021年をインバウン観光の視点から見ると、新型コロナウイルスに翻弄された1年だった。アメリカでは、7月4日の独立記念日周辺では国内旅行の需要が一気に加速し、アメリカ国内の航空需要は2019年にまで回復した。それに続き、日本では東京オリンピック・パラリンピックが無観客で開催された。日本国内の感染者数は急増し、開催自体の賛否両論もあったが、「オリンピックに直接関連した感染はそれほどなかった」「日本はパンデミックの中、オリンピックという比較的難しい局面をうまく乗り切った」というのが海外からの評価であった。その後、日本では感染者数が減少。ところが、ホリデーシーズンに合わせたかのようにオミクロン株が登場し、アメリカで瞬く間に過去最高の新規感染者数の更新。日本でも新規感染者数が急増している。感染力が強い一方で、重症化しないという見方もあるが、予断を許さない状況だ。

 こうした中、日本では引き続き外国人を入国制限しているが、アメリカ発の海外旅行の状況は「行けるところに行く」というものだ。また、パンデミックを経験して、旅行者が海外旅行に求めるものにも変化が出ている。

 例えば、都市観光よりも自然を体験する需要が高まっている。さらには、気候変動からSDGsを考慮する観光客も増えている。日本の旅行関係者の方々にとっては、コロナ禍をいかに乗り切るかが課題だが、旅行トレンドの変化を敏感に捉え、来たる海外旅行の再開の時に備えることも同様に重要だ。