19歳女子、映画で世界に羽ばたく

 全米学生映画祭が10月21日から23日までニューヨークで開催され、西山夏実さんの監督作品「今日も明日も負け犬。」が上映された。西山さん、小田実里さん(脚本)、古庄菜々夏さん(主演女優)、古賀月海さん(スタイリスト)の4人が来米し、世界中の若者と堂々と交流を交わした。

 同作品は、西山さんが福岡県立筑紫丘高校在学中の2年前に制作。「朝起きられない病気」と言われる起立性調節障害をもつ自身の体験をふまえた内容だ。映画づくりは初体験。「映画監督になってお金を貯めて作ろうと思っていたテーマ。コロナ禍で登校できない日が続き、作るなら今だ」と思って走り出してからの彼女たちの団結力と戦略と勢いが凄まじい。まず小田さんが長編小説を書きSNSを通じて販売、それを脚本化。「映画祭で日本一になる映画を作る」と公約して、同校内外から同世代26人を募り、音楽はプロに直談判した。クラウドファンディングで352万円を集め、福岡市で一番大きい映画館の上映会を催し、オリジナルグッズも作った。

 西山さんは、闘病と学業と映画、どれが優先なのかと周囲から問われるなか「26人の時間と人生を預かっている」という思いで3か月部屋にこもって最後の編集作業に取り組んだ。西山さんの熱意と責任感、それを適材適所で支えた小田さん、古庄さん、古賀さんら仲間たちの信頼あってこそ、損得勘定のない素晴らしい映画が仕上がった。「高校生のためのエイガワールドカップ2021」(NPO法人映画甲子園主催)自由部門でグランプリを獲得、ニューヨーク上映の権利を得た。

 同映画祭は、クルーズ船での開会式、AMCエンパイア25での上映、キングズ劇場でのレッドカーペットや表彰式と豪華な内容で、副賞も大学学費免除など、いわば映画人を目指す高校生の登竜門だ。「誰かに寄り添えるような映画であってほしい」と願う西山さんは「アメリカでも伝わるのかなっていうのは正直不安だった。でも涙目で感動したから必ず一票入れるとか映画を作ってくれてありがとうとかの言葉にとても安心した」と話す。

 国際部門でノミネートされたものの惜しくも受賞は逃した。しかし「同年代のクリエーターとの交流が刺激的」(古庄さん)、「数多くの同年代が夢に向かって一生懸命作った作品に感銘」(古賀さん)「青春は世界共通」(小田さん)など、貴重な同世代交流を楽しんだ。そして4人とも、ニューヨークの自由な空気や他人との距離感が大好きになった。「なぜかほっとした。時には非難を浴びながらも私たちがやってきた事をすべて肯定してくれるような街」と西山さん。

 今は全員19歳。今夏には本映画の権利等を守るために一般社団法人「MAKEINU.」を創設、今後もクリエイティブな活動を続けていく。 (小味かおる、写真も)

(写真)左から、古賀さん、西山さん、古庄さん、小田さん